喫茶ときわ
創業60年の純喫茶。トースト・ゆで卵・小鉢がつく昔ながらのモーニングセットは、注文と同時に出てくる速さが漁師たちの支持を集めてきた。窓際のカウンター席から商店街のシャッターが上がる様子が見える。
一言地図: 汐見駅からアーケードを海側へ直進、郵便局の角を左に曲がってすぐ左手。青い日よけが目印。
汐見町 月刊フリーマガジン
7月号 — JULY 2026
早起きの町、汐見町から。今月は商店街の朝の顔「朝ごはん」を特集しました。店めぐり、催しの予定、連載コラムまで、7月のまちの動きを一冊にまとめています。
商店街の朝ごはん
汐見銀座商店街 — 開店は朝5時から。漁を終えた人と、これから漁に出る人がすれ違う時間に、まちの朝ごはんはある。
汐見銀座商店街のシャッターが上がり始めるのは、まだ空が藍色をしているうちだ。汐見港で水揚げを終えた漁師たちが、そのまま商店街に流れ込んでくる。「うちは漁師さんの帰り道に合わせて店を開けてるだけなんです」と話すのは、喫茶ときわの三代目・常盤(ときわ)さん。開店から60年、時間だけは一度も変えていない。
商店街に朝5時開店の店が集まっているのは、汐見漁港の水揚げ時間に理由がある。早朝便で戻る底引き網漁は夜明け前に港へ着く。魚を市場に卸し終えた漁師たちが、まだ日の出前の商店街で朝食をとる。そのため、この通りだけ他の地区より1〜2時間、朝が早く始まる。
「昔は漁師さんしか来なかったけど、今は夜勤明けの人や、早朝ウォーキングのお年寄りも増えました。朝ごはんの時間を目当てに来る人が増えたのは、この10年くらいの変化です」(喫茶ときわ・常盤さん)
パン工房 潮風製パンの店主は、毎朝4時に窯へ火を入れる。「一番風味が飛ばないうちに届けたいから、焼きたてを漁師さんの船着き場まで自転車で運ぶこともあります」。汐見食堂の朝食営業は6時から9時までの3時間限定。焼き魚定食を目当てに、隣町からわざわざ足を運ぶ客も少なくないという。
五十嵐豆腐店では朝いちばんの豆腐に湯をかけただけの「朝湯豆腐」を無料でふるまう習慣が続いている。「売り物じゃなくて、朝の挨拶みたいなものです」と店主。値札のつかない一杯が、この商店街の朝の空気をよく表している。
朝5時から9時までの短い時間に、これだけの朝食文化が凝縮している町は珍しい。今号では、その中でも特に朝の顔として親しまれている4軒を「店めぐり」で詳しく紹介する。歩いて回れる距離に4軒すべてが収まっているので、休日の朝の食べ歩きにもちょうどいい。
朝が美味しい4軒
写真の代わりに、まちの人の言葉で道を示します。歩いて回れる商店街の朝を巡ってください。
創業60年の純喫茶。トースト・ゆで卵・小鉢がつく昔ながらのモーニングセットは、注文と同時に出てくる速さが漁師たちの支持を集めてきた。窓際のカウンター席から商店街のシャッターが上がる様子が見える。
一言地図: 汐見駅からアーケードを海側へ直進、郵便局の角を左に曲がってすぐ左手。青い日よけが目印。
窯出しは朝5時台。塩気を効かせた食パン「汐見の朝」が名物で、早い日は7時前に完売する。店頭のベンチでちぎって食べていく常連も多い。焼きたての湯気が上がる時間帯だけ、商店街に香りが漂う。
一言地図: 商店街入口、魚屋「魚辰」の2軒隣。朝は湯気の出る換気口が目印になる。
その日の水揚げに合わせて焼き魚が変わる定食屋。朝食営業は3時間だけだが、隣町から車で訪れる客も多い。味噌汁の出汁は毎朝、粗からとる。昼の営業とはメニューも値段も別立てになっている。
一言地図: 商店街のちょうど中ほど、理容店「バーバー汐見」の向かい側。のれんは藍色。
毎朝いちばんの豆腐に湯をかけただけの「朝湯豆腐」を、開店から1時間だけ無料でふるまう。売り物ではなく朝の挨拶として続けている習慣で、店先の縁台に座って食べていく人が絶えない。木綿・絹ともに量り売り。
一言地図: 商店街のはずれ、汐見神社の鳥居の手前。店先に湯気の立つ大鍋が出ている。
7月のイベント12件
日付順にまとめました。会場は町内が中心です。詳細は各主催へお問い合わせください。
潮目日記/路地の建築ノート
まちの書き手2名による連載。今月も届きました。
連載 — 第58回
7月に入ると、汐見の海は潮の色が変わる。沖に濁りが出て、岸沿いだけ澄む日が続く。これを漁師のあいだでは「境目が立つ」と呼ぶ。境目が立つと、そこに小魚が集まり、それを狙う大きな魚も寄ってくる。
今月は例年より境目の立つ日が早かった。海水温の上がり方が去年と違うのだろう。魚の顔ぶれも変わってきている。祖父の代からの記録帳を見返しながら、今年の海と付き合っている。
連載 — 第12回
汐見銀座商店街を歩くと、2階の造りが店ごとに少しずつ違うことに気づく。看板建築と呼ばれる、正面だけを飾った建物が多い。昭和の商店主たちが、限られた予算の中で「表だけでも立派に」と工夫した跡だ。
今月は、五十嵐豆腐店の格子戸を採寸した。木組みの間隔が隣家と1寸ほど違う。同じ職人が手掛けたはずなのに、この微妙なずれが、通りに手作りの表情を与えている。