そのKPI 管理、本当に事業を前に進めていますか?

毎月、あるいは毎週のように繰り返される、KPIの集計作業。様々な場所からデータをかき集め、エクセルのシートに貼り付け、関数を修正し、グラフを作り直す…。

「また、この作業か…」

そんな風に、ふとため息が漏れたことはありませんか? あなたがその作業に費やしている時間は、本当にビジネスを前に進めるための時間になっているでしょうか。レポートを完成させることが目的となり、本来最も重要なはずの「データから次の一手を考える」時間が、後回しになってはいないでしょうか。

こんにちは。株式会社サードパーティートラストのアナリストです。私はこれまで20年以上にわたり、ECサイトからBtoB事業まで、あらゆる業界で「データ」を起点とした事業改善に携わってきました。

この記事は、かつての私自身や、多くのクライアントが直面してきた「KPI管理 エクセル」という根深い課題に対する、私なりの答えです。単なるテクニックの紹介ではありません。あなたの貴重な時間を解放し、KPI管理を「作業」から「事業成長のエンジン」へと昇華させるための、本質的な考え方と具体的なステップをお伝えします。

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なぜ私たちは「エクセルでのKPI管理」に限界を感じるのか?

まず誤解のないようにお伝えしたいのですが、私はエクセルを否定しているわけではありません。多くのPCに標準でインストールされており、誰でも手軽に始められる。これほど優れたツールは他にないでしょう。実際、事業の初期段階や、まずはKPI管理の文化を根付かせたいというフェーズにおいては、エクセルは最高の相棒となり得ます。

しかし、事業が成長し、扱うデータが複雑化するにつれて、その「手軽さ」が次第に足かせとなってくるのも、また事実です。私が見てきた多くの現場では、主に3つの「罠」にはまり、貴重なリソースを浪費していました。

罠1:「更新作業」という名の時間泥棒

最も分かりやすい罠が、手作業による工数の増大です。データの入力、更新、集計。そのすべてに人の手が介在するため、どうしても時間がかかります。そして、人が作業する以上、入力ミスや計算式のズレは避けられません。

私も過去に、データの蓄積が不十分なまま焦ってクライアントに報告し、翌月になって全く違う傾向が見えて信頼を損なった苦い経験があります。不正確なデータに基づいた分析は、羅針盤が狂ったまま航海に出るようなもの。正しい判断どころか、進むべき道さえ見誤らせてしまうのです。

罠2:「秘伝のタレ」化するファイルの恐怖

「このエクセルファイルは、〇〇さんしか触れない…」あなたの会社にも、そんな属人化したファイルはありませんか?

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かつて、あるクライアントに画期的な分析手法を導入した際、担当者以外にその価値が伝わらず、結局使われなくなってしまったことがありました。データは、誰もが理解し、行動に移せて初めて価値が生まれます。一部の専門家だけが分かる「秘伝のタレ」は、組織の成長をむしろ阻害してしまうのです。

罠3:ビジネスの速度についていけない「静的なデータ」

エクセルで管理されるデータの多くは、週次や月次といった、ある一時点を切り取った「静的なデータ」です。しかし、現代のビジネス環境は目まぐるしく変化します。

昨日まで有効だった施策が、今日にはもう通用しない。そんなスピード感が求められる中で、一週間前のデータを見て意思決定を行うのは、バックミラーだけを見て車を運転するようなものです。リアルタイムに状況を把握し、即座に次のアクションを判断する。エクセル単体でその速度に対応し続けるのは、極めて困難と言えるでしょう。

それでもエクセルで始めるなら。押さえるべき「3つの原則」

「では、エクセルはもう使うべきではないのか?」というと、そうではありません。大切なのは、ツールの限界を理解した上で、賢く付き合うことです。もしあなたが、これからKPI管理を始める、あるいは現在の運用を見直す立場にあるなら、まずはこの3つの原則を徹底してみてください。これだけでも、kpi管理 エクセルの質は劇的に向上するはずです。

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原則1:KPIは「KGIへの登山ルート」から逆算する

KPI管理で最もよくある失敗が「KPIの乱立」です。あれもこれもと指標を増やしすぎ、結局何が重要なのか分からなくなってしまう。以前、50以上のKPIを管理していた企業がありましたが、分析に忙殺され、肝心のアクションが全く追いついていませんでした。

KPI 設定する際は、まず最終目標であるKGI(Key Goal Indicator)という「山頂」を明確に定めましょう。そして、その山頂にたどり着くために、必ず通過すべきチェックポイントは何か?という視点でKPI(Key Performance Indicator)を設計するのです。KPIは多くても10個以内、理想は3~5個に絞り込むこと。数が少ないほど、組織の意識は集中します。

原則2:データは「生もの」。鮮度と正確さが命

不正確なデータは、もはやデータではありません。ノイズです。誰が、いつ、どこから、どのようなルールでデータを入力するのか。その定義を明確にしましょう。

エクセルの「入力規則」機能を使ったり、定期的に第三者が数値をダブルチェックする体制を整えたりするだけでも、データの品質は大きく向上します。面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が、後々の分析の質を大きく左右するのです。

原則3:レポートは「見せる相手」に合わせてデザインする

データは、それ自体が価値を持つわけではありません。受け手が理解し、行動に移せて初めて価値が生まれます。経営層が見たい数字と、現場の担当者が見たい数字は、当然異なります。

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経営層には全体像が俯瞰できるサマリーを、現場には具体的なアクションに繋がる詳細データを。ピボットテーブルやグラフを駆使し、相手のリテラシーや役割に合わせて「見せ方」を変えること。この「伝える力」こそが、アナリストに求められる重要なスキルの一つです。

「数値報告」で終わらせない。KPIを「事業成長のエンジン」に変える思考法

さて、ここからが本題です。エクセルでの管理をどれだけ洗練させても、それはあくまで「現状把握」の効率化に過ぎません。私たちが創業以来15年間、一貫して掲げてきた信条は、「データは、人の内心が可視化されたものである」ということです。

PV数やCVRといった数字の羅列を眺めるだけでは、何も始まりません。その数字の裏側で、ユーザーが何を感じ、何を考え、なぜそのような行動をとったのか。その「内心」を読み解き、ストーリーとして語ること。そこにこそ、データ分析の本当の価値があります。

私たちは、「数値の改善」を目的とはしません。常に「ビジネスの改善」を目的とします。サイトの使い勝手を少し変えるだけで改善できる幅は、たかだか数パーセントです。しかし、データからユーザーの根本的な欲求や悩みを捉え、商品やサービス、あるいはビジネスモデルそのものにフィードバックできれば、改善の幅は10倍、100倍にもなり得ます。

この領域に踏み込むためには、エクセルという「点」の管理から脱却し、複数のデータを繋ぎ合わせ、「線」や「面」でビジネスを捉える視点が必要不可欠なのです。

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エクセルの先へ。KPI管理の自動化がもたらす「本当の価値」

「kpi管理 エクセル」の限界を超え、ビジネスを本気で加速させたいと考えるなら、KPI管理の「自動化」は避けて通れないテーマです。自動化がもたらす価値は、単なる「時短」だけではありません。

まず、手作業による集計業務から解放されることで、あなたは「分析」という最も創造的で価値のある仕事に集中できます。

次に、BIツール(例えばGoogleのLooker Studioなど)を導入すれば、広告データ、CRMデータ、基幹システムの売上データなどを統合し、リアルタイムに可視化できます。これにより、組織は「勘」や「経験」だけに頼るのではなく、誰もが同じデータを見て議論し、迅速に意思決定を下せるようになります。これは、組織に「データ」という共通言語が生まれる瞬間です。

かつて私が支援したある企業では、部門ごとにバラバラだったKPIをBIツールで一元化しました。すると、それまで見えなかった部門間の連携の課題が浮き彫りになり、組織改編にまで繋がったのです。これは、もはやWebサイトの改善ではありません。データが、ビジネスそのものを動かした好例です。

明日からできる、あなたの「最初の一歩」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。きっとあなたの頭の中には、自社のKPI管理の風景が思い浮かんでいることでしょう。

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もしあなたが、この記事を読んで「うちの会社のことだ」と感じたなら、まずはその課題意識こそが、変化への最も重要な一歩です。

ぜひ、今あなたが管理しているエクセルファイルを開いてみてください。そして、自分にこう問いかけてみましょう。

  • この数字を見るために、自分は毎月どれくらいの時間を費やしているだろうか?
  • このレポートから、次の具体的なアクションは明確に描けるだろうか?
  • このやり方を、あと1年、3年と続けていく未来を想像できるだろうか?

もし、その答えに少しでも曇りがあるのなら。もし、「作業」から脱却し、データで事業を動かす未来に少しでも興味が湧いたのなら。ぜひ一度、私たちにお声がけください。

私たちは、単にツールを売る会社ではありません。あなたの会社の課題を深く理解し、予算や体制といった現実を踏まえた上で、共にビジネスを改善するパートナーです。時に、耳の痛いことをお伝えすることもあるかもしれません。しかしそれは、私たちが本気であなたの会社の成長を願っているからに他なりません。

データという羅針盤を手に、あなたのビジネスという船を、まだ見ぬ目的地へと一緒に進めていけることを、心から楽しみにしています。

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