SEOは登山と同じ。内部対策と外部対策という両輪で、ビジネスの頂を目指す
こんにちは。株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。20年にわたり、様々な業界のWebサイトが抱える課題と、データを通して向き合ってきました。
「内部対策も外部対策も、書籍やネットで学んだ通りにやっている。それなのに、なぜか成果に繋がらない…」
もしあなたが今、そう感じているとしたら、それは対策の一つひとつが間違っているからではないのかもしれません。多くの場合、その原因は「内部対策」と「外部対策」が、それぞれ別の目的を持ったバラバラの施策になってしまっていることにあります。
内部対策は、いわば登山のための「装備と体力づくり」。歩きやすい登山靴を用意し、ルートを頭に入れ、十分な体力をつけること。これがなければ、そもそも山には登れません。
そして外部対策は、登山仲間からの「信頼や評判」です。経験豊富な登山家から「あのルートは素晴らしいぞ」と推薦されたり、仲間と一緒に登ったりすることで、安全かつ確実に山頂へ近づけます。

どちらが欠けても、山頂にたどり着くのは困難です。この記事では、20年間の現場経験から見えてきた、この二つの対策を連携させ、あなたのビジネスを真に成長させるための「成功の地図」の描き方をお話しします。
内部対策の本質:ユーザーと検索エンジンへの「おもてなし」の設計
内部対策と聞くと、専門的な技術の話を想像するかもしれません。しかし、その本質は非常にシンプルです。それは、あなたのサイトを訪れてくれた「お客様(ユーザー)」と、そのお客様を案内してくる「案内人(検索エンジン)」の両方に対する、最高のおもてなしを設計することに他なりません。
ウェブサイトを一つの「家」だと考えてみてください。お客様が家の中で迷わず、ストレスなく目的の部屋にたどり着けるか。家の構造は、案内人にとって分かりやすいものになっているか。これが内部対策の核心です。
私たちが創業以来、一貫して掲げている信条があります。それは「データは、人の内心が可視化されたものである」ということ。アクセス解析データを見れば、お客様が家のどこで道に迷い、どこで不満を感じているのかが、手に取るように分かります。
例えば、あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの誘導がうまくいかない、というご相談がありました。担当者の方は、何度もバナーのデザインを変えるなど努力されていましたが、遷移率は0.1%から一向に改善しませんでした。

私たちはデータから、ユーザーがバナー広告を「広告」として無視している内心を読み取りました。そこで提案したのは、リッチなデザインにこだわるのをやめ、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」に変えること。結果、遷移率は1.5%へと15倍に向上しました。「簡単な施策ほど正義」という私の哲学を、改めて証明してくれた出来事です。
見栄えの良いテクニックに走る前に、まずはデータに耳を傾け、お客様が本当に求めているおもてなしは何かを考える。それが内部対策の第一歩です。
外部対策の本質:一朝一夕には築けない「信頼」の積み重ね
次に外部対策です。これは、あなたのサイト(=家)が、いかに「信頼できる場所」であるかを、外部の世界に証明していく活動です。一言でいえば、社会的な「信頼」の積み重ねに他なりません。
その代表的な指標が「被リンク」、つまり他のサイトからの紹介です。これは、ビジネスの世界における「推薦状」のようなものだと考えてください。
ここで多くの人が陥るのが、「とにかく推薦状(被リンク)の数を集めれば良い」という誤解です。しかし、考えてみてください。誰から推薦されるかが重要ではないでしょうか?

闇雲にリンクを集めるのは、「誰からの推薦状でも良いのでください」と頼んで回るようなものです。それでは、あなたのビジネスの価値は高まりません。むしろ、質の低いサイトからのリンクは、あなたの評判を落とすことさえあります。
本当に価値のある外部対策とは、「ぜひ、うちのサイトであなたのことを紹介させてほしい」と、相手から言われるような価値を、あなたのビジネス自身が持つことです。それは、専門性の高いユニークな情報であったり、多くの人の問題を解決する画期的なサービスであったりします。
外部対策とは、小手先のテクニックではなく、あなたのビジネスそのものの価値を問い、それを誠実に発信し続ける地道な活動なのです。
「最高のレストラン」のジレンマ:連携なくして成功なし
さて、ここからが最も重要なお話です。なぜ、多くのサイトで内部対策と外部対策がうまく機能しないのか。それは、この二つが断絶しているからです。
想像してみてください。路地裏に、最高の食材と腕利きのシェフが揃った、素晴らしいレストラン(=優れた内部対策)があったとします。しかし、その店の存在を誰も知らず、看板も出ていなければ(=外部対策不足)、お客様はやってきません。

逆に、SNSやメディアで「すごいレストランができた」と評判が広まっている(=外部対策先行)とします。しかし、期待して行ってみたら、料理は平凡で、接客もひどかった(=内部対策不足)。そのお客様は二度と来ないでしょうし、悪い評判が広まってしまうかもしれません。
SEOの成功とは、この二つを高いレベルで連携させることに尽きます。サイト内部のデータからユーザーの満足度を高めるヒントを見つけ、それをコンテンツとして磨き上げる(内部対策)。そして、その価値あるコンテンツを、それを必要としている人々に的確に届け、評判を築いていく(外部対策)。この好循環を生み出すことこそが、私たちの仕事の神髄です。
この循環を生み出す潤滑油となるのが、やはり「データ」です。サイト内の行動データと、サイト外からの評判データを掛け合わせることで、初めて「次に打つべき一手」が明確になるのです。
私が過去に犯した失敗から学ぶ、SEOの落とし穴
偉そうなことを語ってきましたが、私自身、これまでに数えきれないほどの失敗を重ねてきました。その中でも、特に皆さんの参考になりそうな失敗談を二つ、正直にお話しさせてください。
一つは、クライアントの組織事情を無視した「正論」を振りかざしてしまったことです。あるサイト 分析で、コンバージョンへの最大のボトルネックが、明らかに特定のフォームにあると突き止めました。しかし、そのフォームの管轄は、担当者の方とは別の部署。組織的な抵抗が予想されました。当時の私は「データで正しいと出ているのだから、これを直すべきだ」と理想論を押し付け、結果として提案は実行されず、貴重な時間を無駄にしてしまいました。

言うべきことを言わないのはアナリスト失格ですが、相手の現実を無視した正論もまた無価値です。相手の文化や体制を深く理解し、実現可能なロードマップを共に描く。このバランス感覚がいかに重要か、痛感した出来事でした。
もう一つは、データを「待つ勇気」がなかったことです。新しい計測設定を導入した直後、期待値の高いクライアントから成果を急かされ、営業的なプレッシャーもありました。私は、データが不十分と知りながら、焦って不正確なデータに基づいた提案をしてしまったのです。翌月、正しいデータが蓄積されると、前月の提案が全くの見当違いだったことが判明し、クライアントの信頼を大きく損ないました。
データアナリストは、時に周囲の期待やプレッシャーというノイズからデータを守る、最後の砦でなければなりません。不確かなデータで語るくらいなら、沈黙を選ぶ。正しい判断のためには「待つ勇気」が不可欠です。
まとめ:明日から踏み出す、ビジネス改善への第一歩
ここまで、内部対策と外部対策の本質、そしてそれらを連携させる重要性についてお話ししてきました。
SEOはテクニック論に陥りがちですが、その本質は、あなたのビジネスを、それを心から必要としている人々に、誠実に届けるための活動です。その視点に立てば、小手先の技に振り回されることはなくなるはずです。

内部対策は、お客様への「おもてなし」の設計。
外部対策は、社会的な「信頼」の積み重ね。
そして、この二つを繋ぎ、ビジネスの改善という真のゴールへと導くのが、データの力です。
では、明日から何ができるか。最後に、具体的な第一歩をお伝えします。
もしお持ちでしたら、Google Search Consoleを開き、「検索パフォーマンス」レポートの中にある「クエリ」という項目を、まずは10分だけでいいので、じっと眺めてみてください。そこに並んでいる言葉の一つひとつが、お客様があなたのビジネスに何を期待しているか、という「内心の声」そのものです。
その声に、どう応えるか。そこに、あなたのビジネスが次に進むべき道のヒントが隠されています。

もし、その声の本当の意味を深く読み解きたい、具体的な次の一手を見つけたい、そう感じた時は、いつでも私たちにご相談ください。あなたのビジネスという山の頂まで、最高のパートナーとして伴走することをお約束します。