GA4のセグメントとは?データから顧客の”本音”を読み解き、ビジネスを動かす実践的アプローチ
こんにちは。株式会社サードパーティートラストのアナリストです。ウェブ解析の世界に身を置いて、早いもので20年が経ちました。
GA4 導入したものの、画面に並ぶ無数の数字を前にして「結局、何から見ればいいんだろう…」と途方に暮れてしまった経験はありませんか?あるいは、「データは取れているはずなのに、どうして売上に繋がらないんだ」と、もどかしい思いを抱えてはいないでしょうか。
もし、あなたがそんな壁に突き当たっているのなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。なぜなら、それはかつての私や、私が支援してきた多くの企業が通ってきた道でもあるからです。
今回は「ga4 セグメントと」いうテーマを軸に、単なる機能解説に留まらない、あなたのビジネスを本当に前進させるためのデータとの向き合い方について、私の経験を交えながらお話ししたいと思います。この記事を読み終える頃には、数字の羅列が、顧客一人ひとりの「声なき声」として聞こえ始めるはずです。
セグメントとは、顧客を理解するための『解像度』を上げること
まず、GA4における「セグメント」とは何でしょうか。一言でいえば、ウェブサイトに訪れる多様なユーザーを、特定の条件でグループ分けする機能のことです。しかし、私はこれを単なる「機能」だとは考えていません。セグメントとは、顧客という存在をぼんやりとした集合体ではなく、輪郭のはっきりしたグループとして捉えるための、いわば分析の『解像度』を上げるレンズのようなものなのです。

考えてみてください。サイト全体の平均コンバージョン率が「1%」だったとして、その数字から次の一手は打てるでしょうか?答えは「ノー」です。その1%の内訳は、初めて訪れた人なのか、何度も来ているリピーターなのか。広告から来た人なのか、検索して見つけてくれた人なのか。それらが全く分からないからです。
GA4には、主に3種類のセグメント(レンズ)が用意されています。これらを使い分けることが、第一歩です。
- ユーザーセグメント:人を軸にした分類です。「過去に商品を購入したことがある人」「特定の地域に住んでいる人」など、いわば顧客台帳でグループ分けするイメージです。長期的な顧客育成を考える上で欠かせません。
- セッションセグメント:訪問を軸にした分類です。「広告Aをクリックして訪問した」「スマホでサイトを閲覧した」など、その時々の来店目的や状況で分けるイメージです。キャンペーンの効果測定などに力を発揮します。
- イベントセグメント:行動を軸にした分類です。「資料請求ボタンをクリックした」「動画を最後まで視聴した」など、ユーザーの具体的なアクションで分けるイメージです。ユーザーの意図を最もシャープに捉えることができます。
これらの「レンズ」を通して初めて、私たちは「その他大勢」の向こう側にいる、顧客一人ひとりの姿を捉えることができるのです。
なぜ、今GA4のセグメントがビジネスに不可欠なのか
「セグメントの重要性は分かった。でも、なぜそれがビジネスに不可欠なのですか?」という問いを、これまで何度も受けてきました。
その答えは、私たちが創業以来15年間、一貫して掲げてきた信条に集約されます。それは「データは、人の内心が可視化されたものである」という考え方です。セグメントを使わずに全体の平均値だけを見るのは、大勢の人のざわめきを聞いているようなもの。そこからは、個々の本音や感情は読み取れません。

セグメントは、そのざわめきの中から「購入を真剣に悩んでいる人」や「情報収集だけが目的の人」といった、同じ内心を持つグループの声だけをクリアに聞き取るためのツールなのです。
以前、あるECサイトで「サイト全体のCVRが低い」という漠然とした課題がありました。しかし、セグメント 分析を進めると、驚くべき事実が判明したのです。実は「リピーターかつメルマガ経由のユーザー」のCVRは非常に高い一方で、「新規かつSNS広告経由のユーザー」のCVRが壊滅的に低く、全体の平均値を押し下げていたのです。
このインサイトがなければ、私たちは見当違いのサイト改修にリソースを割いていたかもしれません。しかし、この事実に基づき、SNS広告のクリエイティブとランディングページを「新規顧客向け」に最適化する、という的確な一手で、全体のCVRを1.8倍に改善することができました。これが、セグメントがビジネスに不可欠な理由です。
実践!GA4セグメント作成の思考プロセス
では、実際にどうやってセグメントを作成するのか。ここではツールの操作方法ではなく、「何を知りたいか?」から始める、アナリストの思考プロセスをご紹介します。これができれば、ツールは後からついてきます。
STEP1: ユーザーセグメント - 「どんな人か」で分ける
まず考えるべきは「誰に」アプローチしたいかです。例えば、ビジネスの根幹を支える「優良顧客」の行動を理解したいと考えたとします。その場合、「過去に3回以上購入し、かつ直近1ヶ月以内にサイト訪問があるユーザー」といったセグメントを作成します。

このセグメントを適用してレポートを見ることで、「優良顧客はどのコンテンツを好むのか」「どんな経路でサイトに来るのか」といった、彼らとの関係性を深めるためのヒントが見つかります。逆に「初回訪問者」セグメントを見れば、新規顧客がどこでつまずいているのか、おもてなしの課題が浮き彫りになります。
STEP2: セッションセグメント - 「どんな目的で来たか」で分ける
次に、ユーザーの「今回の訪問目的」に焦点を当てます。例えば、多額の予算を投下した広告キャンペーンの効果を知りたい場合、「キャンペーンA経由のセッション」というセグメントは必須です。
このセグメントを適用すれば、キャンペーン経由のユーザーが期待通りの行動をしているか、すぐに離脱していないか、といった投資対効果を正確に判断できます。多くの担当者が、流入経路を無視して全体の数字を見てしまい、「広告の効果がよく分からない」という結論に陥りがちです。セグメントは、その迷いを断ち切ってくれます。
STEP3: イベントセグメント - 「何をしたか」で分ける
最も具体的で強力なのが、このイベントセグメントです。例えば、「商品詳細ページは見たが、カートには追加しなかった」という行動をしたユーザー。これは、購入の最終段階で何かをためらった、「あと一押し」が必要な顧客群と言えるでしょう。
このセグメントを作成し、彼らが離脱する直前に見ていたページや、比較検討していそうな他の商品を分析することで、「価格がネックだったのか?」「送料が分かりにくかったのか?」といった仮説を立てることができます。この仮説こそが、次の具体的な改善アクションに繋がるのです。

私が経験した、GA4セグメント活用の光と影
理論は分かっても、実践はまた別の話です。ここでは、私が20年のキャリアで経験した、セグメント活用にまつわる実体験を、包み隠さずお話しします。
成功例:地味な「テキストリンク」がCVRを15倍にした話
あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの遷移率が、どんなにリッチなバナーを作っても一向に上がらない、という課題がありました。データを見ても、ユーザーはバナーをほとんどクリックしていません。
そこで私は、見た目の派手さではなく、ユーザーの心理に立ち返りました。「記事を読んでいるユーザーは、情報を求めているはずだ」と。そして、記事の文脈に合わせたごく自然な「ただのテキストリンク」への変更を提案しました。正直、現場からは「地味すぎる」と反対の声も上がりました。
しかし、結果は劇的でした。遷移率は0.1%から1.5%へ、実に15倍に向上したのです。これは、「バナー広告を無視する」というユーザーセグメントの内心を、データから読み解けたからこその成功でした。簡単な施策ほど正義。この経験は、私の哲学の一つになっています。
失敗例:「正論」だけでは、組織は動かなかった
一方で、痛い失敗も数多く経験しました。あるクライアントサイトで、コンバージョンフォームの使い勝手が致命的に悪いことは、データを見れば明らかでした。私は「ここを直すべきです」と、正論の提案を続けました。

しかし、そのフォームは別の部署が管轄しており、組織の壁は厚かった。私はクライアントの社内事情を無視し、「データ的に正しいから」という一点張りで提案を続けた結果、何も実行されないまま時間だけが過ぎていきました。
この経験から学んだのは、アナリストは、顧客の現実を深く理解した上で、実現可能なロードマップを描く必要があるということです。データという「正論」と、組織という「現実」。その両方に寄り添って初めて、ビジネスは前に進むのだと痛感しました。
まとめ:明日からできる、最初の一歩
ここまで、GA4のセグメントについて、私の経験と考えをお話ししてきました。データ分析は、決して難しい数式や複雑なツールを使いこなすことではありません。それは、データの向こう側にいる「人」を理解しようと努める、地道で、しかし非常に創造的な活動なのです。
さあ、この記事を閉じたら、ぜひあなたも最初の一歩を踏み出してみてください。
それは、大掛かりな分析である必要はありません。まずはGA4を開き、「商品を購入してくれたお客様(purchaseイベント)」というセグメントを一つだけ作ってみる。そして、その人たちがサイトに訪れてから購入するまでに、どんなページを、どんな順番で見ていたかを眺めてみてください。

そこに、あなたのビジネスを成長させるための、貴重な物語の断片がきっと隠されています。
もし、そのデータから物語を読み解くのが難しいと感じたり、組織の壁を越えて改善を進めるためのパートナーが必要だと感じたりした際には、いつでも私たちにご相談ください。あなたのビジネスに眠る可能性を、データと共に解き明かすお手伝いができることを、心から楽しみにしています。