「タグマネージャーとアナリティクスの設定」で挫折しない。データ分析の壁を越え、ビジネスを動かすための実践ガイド

こんにちは。株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。かれこれ20年以上、ECサイトからBtoB、メディアまで、様々なウェブサイトのデータと向き合い、その裏側にあるお客様のビジネス課題を解決するお手伝いをしてきました。

多くのマーケターや経営者の方とお話しする中で、こんな声をよく耳にします。
「データはたくさんあるのに、次の一手が見えない」
「設定したつもりが、実は正しく計測できていなかった…」

そのお気持ち、痛いほどよく分かります。特に、Googleタグマネージャー(GTM)とGoogleアナリティクス(GA)の連携は、ウェブ分析の要でありながら、多くの方がつまずきやすいポイントです。しかし、この連携は単なる技術的な設定ではありません。それは、あなたのビジネスを成長させるための羅針盤を手に入れる、極めて重要なプロセスなのです。

この記事では、小手先の設定方法をなぞるだけではなく、私たちが20年の実践で培ってきた「なぜ、その設定が必要なのか」「データから何を読み解き、どう行動に繋げるのか」という本質的な部分を、余すところなくお伝えします。この記事を読み終える頃には、きっとデータを見る目が変わり、ビジネスを動かすための新たな一歩を踏み出せるはずです。さあ、一緒にデータ分析の壁を乗り越えていきましょう。

なぜGTMとGAの連携は「不可欠」なのか?分析の「深さ」がビジネスを変える

まず、最も大切な質問から始めましょう。なぜ、Googleアナジナリティクスのコードを直接サイトに設置するのではなく、わざわざGoogleタグマネージャーを介して連携させる必要があるのでしょうか。

ハワイの風景

ウェブサイトに訪れた人の数やページビューを見るだけなら、GAの直接設置でも十分かもしれません。しかし、私たちが一貫して掲げてきた信条は「データは、人の内心が可視化されたものである」ということ。そして「数値の改善」ではなく「ビジネスの改善」を目的とすることです。

この視点に立つと、単なるPV数だけでは不十分です。「どの資料がダウンロードされたか」「どの動画が最後まで再生されたか」「購入を迷っているユーザーがどのページを往復しているか」。こうしたビジネスの意思決定に直結する「問い」に答えるためには、ユーザーの具体的な行動を一つひとつ捉える必要があります。

GTMは、まさにそのための「計測の司令塔」です。エンジニアに都度依頼することなく、マーケター自身が迅速に、かつ柔軟に「このボタンがクリックされたら」「このフォームが表示されたら」といった計測の引き金(トリガー)を設定できる。このスピード感と柔軟性こそが、GAという「観測所」の性能を最大限に引き出し、分析の深さを、ひいてはビジネスの成長角度を大きく変えるのです。

最初の一歩:Googleタグマネージャー(GTM)の基本設定

それでは、具体的な設定に入っていきましょう。まずはGTMのアカウントを作成し、「コンテナ」を設定します。これは、あなたのウェブサイトに関する全てのタグ設定を格納する「道具箱」のようなものだと考えてください。

GTMの心臓部は、「タグ」「トリガー」「変数」の3つの要素で構成されています。

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  • タグ:「何をするか」の命令書(例:GAにページビュー情報を送る)
  • トリガー:「いつ実行するか」の引き金(例:全てのページが表示された時)
  • 変数:「どんな情報を付け加えるか」の補足情報(例:クリックされたボタンのテキスト)

多くの方が最初につまずくのが、この3つの関係性です。特に「変数」は後回しにされがちですが、実は分析の解像度を上げるための鍵がここにあります。例えば「クリック」という同じイベントでも、「どのページの」「どのボタン」がクリックされたのかを変数で取得することで、分析の価値は全く違ったものになります。

そして最も重要なのが、ウェブサイトへのGTMコードの設置です。GTMから発行される2種類のコードを、ウェブサイトのHTMLソースコードの指定された場所(<head>内と<body>直後)に埋め込みます。この作業が、GTMという司令塔とあなたのサイトを繋ぐ「神経」となります。少し緊張する作業かもしれませんが、ここが全ての始まりです。

計測の器を整える:Googleアナリティクス(GA4)の設定

GTMの準備ができたら、次はデータの受け皿となるGoogleアナリティクス(GA4)の設定です。ここで重要なのは、GA4が「ユーザー中心」の計測モデルに進化したことを理解することです。旧来のUA(ユニバーサルアナリティクス)が「セッション(訪問)」単位でデータを捉えていたのに対し、GA4は「イベント」を軸に、ユーザー一人ひとりの行動を時系列で追跡します。

アカウントを作成し、ウェブサイトを登録する「プロパティ」を作成しましょう。このプロパティ設定で発行される「測定ID(G-xxxxxxxxxx)」が、GTMとの連携で必要になる重要なIDです。このIDをGTMに設定することで、GTMが捉えたユーザー 行動が、あなたのGA4プロパティにデータとして送信されるようになります。

かつて、あるクライアントでGAの設定を急ぐあまり、データが十分に溜まっていない段階で分析レポートを提出してしまった苦い経験があります。翌月、データが蓄積されると全く違う傾向が見え、クライアントの信頼を大きく損ないました。データアナリストは、時に正しい判断のために「待つ勇気」が不可欠です。設定を終えたら、焦らず、データが正しく蓄積されているかをじっくりと見守りましょう。

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GTMとGA4 連携させる:データ収集の仕組みを完成させる

いよいよ、GTMとGA4を連携させます。この作業は、先ほど準備した「司令塔」と「観測所」を正式に接続するプロセスです。

GTM側で新しい「タグ」を作成します。タグの種類は「Googleアナリティクス: GA4 設定」を選択し、先ほどGA4で取得した「測定ID」を入力します。そして、このタグを発火させる「トリガー」として「Initialization - All Pages」または「All Pages」を選択します。これで、サイトの全てのページでGA4の基本的な計測が開始されるようになります。

設定が完了したら、必ずGTMの「プレビューモード」を使って動作確認を行いましょう。プレビューモードを使うと、実際のサイトでどのタグが、どのタイミングで発火しているかをリアルタイムで確認できます。ここで意図通りにGA4のタグが発火していること、そしてGA4の「リアルタイムレポート」に自分のアクセスが反映されることを確認できれば、連携は成功です。

ここで多くの企業が見落としがちなのが、検証プロセスの重要性です。設定は完璧だと思い込み、この確認を怠った結果、数ヶ月後にデータが全く取れていなかった、という悲劇は後を絶ちません。地味に見えるかもしれませんが、この検証こそが、後の分析の正確性を担保する生命線なのです。

連携がもたらす「ビジネス変革」:簡単な施策が大きな成果を生む

さて、正しく連携されたGTMとGAは、あなたのビジネスに何をもたらすのでしょうか。それは単なる「データが見える化」に留まりません。

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かつて、あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの遷移率が低いという課題がありました。担当者はリッチなバナーデザインのABテストを繰り返していましたが、成果は一向に上がりませんでした。私たちはデータから「ユーザーはデザインではなく、文脈に沿った情報を求めている」と仮説を立て、GTMを使ってごく自然な「テキストリンク」への変更を提案・即時実装しました。結果、遷移率は0.1%から1.5%へと15倍に向上しました。「簡単な施策ほど正義」――これは、私たちが見栄えの良い提案の誘惑に打ち勝ち、データとユーザー心理に誠実に向き合った結果得られた、重要な教訓です。

GTMがあれば、こうした「簡単で、低コストで、効果の大きい施策」を、エンジニアの手を煩わせることなく、思いついたその日に試すことができます。この施策実行のサイクルを高速で回せることこそが、GTMとGA連携がもたらす最大の価値の一つです。

また、データは時に、組織の「不都合な真実」を突きつけます。コンバージョンフォームの使い勝手が悪い、というのは分かっていても、管轄部署が違うため誰も指摘できない…。そんな状況に陥ったことはありませんか?私たちはデータという客観的な事実をもって、そうした組織の壁を越えるための交渉材料を提供します。顧客に忖度せず、しかし現実的な実行計画を示す。このバランス感覚こそが、真にビジネスを動かすと信じています。

明日からできる、はじめの一歩

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。「タグマネージャー アナリティクス 設定」の重要性と、その先にある可能性を感じていただけたでしょうか。

もし、あなたが今、何から手をつけていいか分からないと感じているなら、まずはたった一つ、「あなたのビジネスにとって、最も重要なユーザー行動は何か?」を定義することから始めてみてください。「資料請求ボタンのクリック」でも「会員登録の完了」でも構いません。そして、その行動が今、正しく計測できているかを確認する。そこが、全てのスタートラインです。

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データ分析とは、ツールを使いこなすことではありません。データという「ユーザーの心の声」に耳を傾け、そこから物語を読み解き、ビジネスをより良い方向へ導くための「次の一手」を描く旅のようなものです。

もし、その旅の途中で道に迷ったり、もっと深い物語を読み解くためのパートナーが必要だと感じたりした際には、いつでも私たちにご相談ください。20年間、データと共に歩んできた経験を活かし、あなたのビジネスに最適な羅針盤を一緒に作り上げるお手伝いができるはずです。

まずは、こちらから、お気軽にお問い合わせください。あなたとの対話を楽しみにしています。

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