「人事・採用」にこそデータ分析を。勘と経験を卒業し、事業を成長させる人材を見抜く方法
「優秀な人材が欲しい。でも、面接で『この人だ!』と思っても、入社後に期待通り活躍してくれない…」
「採用コストは増える一方なのに、なぜか良い人材からの応募が集まらない…」
経営者や人事の責任者であるあなたが、このような壁に突き当たっているとしたら。それは決して、あなたの会社の魅力が足りないからでも、人事担当者の能力が低いからでもありません。もしかすると、その原因は「採用」という、企業の根幹をなす活動を、いまだに「勘」と「経験」という不確かなものに頼ってしまっているからかもしれません。
こんにちは。株式会社サードパーティートラストのアナリストです。私は20年間、ウェブ解析という領域で、ECサイトからBtoB、メディアまで、様々な企業のビジネス改善に携わってきました。
一見すると、ウェブ解析と人事は全く違う分野に見えるかもしれません。しかし、私たちが創業以来15年間、一貫して掲げてきた信条は「データは、人の内心が可視化されたものである」ということです。サイト上のクリックや滞在時間の裏にユーザーの迷いや喜びがあるように、採用活動における様々なデータにも、候補者の意欲や不安、そして「活躍する人材」の予兆が隠されています。
この記事では、単なるデータ分析 ツールの話をするつもりはありません。私がこれまで現場で見てきた成功と失敗の経験をもとに、「人事・データ分析・採用」というテーマを深く掘り下げ、データの力でいかにして企業の未来を担う人材を見つけ、育てていくのか。その具体的な道筋を、あなたと一緒 に考えていきたいと思います。

なぜ今、人事・採用に「データ分析」が必要不可欠なのか?
「採用は、結局のところ『ご縁』だから」。
これまで、本当に多くの企業でこの言葉を耳にしてきました。もちろん、それも一理あります。しかし、ビジネス環境が複雑化し、あらゆるものがデータで語られるようになった現代において、「ご縁」という言葉だけで採用活動を片付けてしまうのは、あまりにもったいない、と私は考えています。
それはまるで、最新のカーナビがあるのに、勘だけを頼りに見知らぬ土地を運転するようなものです。道に迷い、時間を浪費し、ガソリン(=採用コスト)を無駄にしてしまうかもしれません。
データ分析を人事・採用に活かす、ということは、このカーナビを手に入れることに他なりません。例えば、「どの求人媒体の、どの文言に惹かれて応募してきた人が、入社後に高いパフォーマンスを発揮しているのか」を分析できれば、採用広告の費用対効果は劇的に改善されるでしょう。
あるいは、面接 評価シートや適性検査の結果と、入社後の評価、エンゲージメントスコアを突き合わせることで、「自社で活躍する人材に共通する、見えざる特性」を発見できるかもしれません。これは、面接官の主観や経験だけでは決して見抜けない、客観的な事実です。
私が常々申し上げてきたのは、「数値の改善を目的としない。ビジネスの改善を目的とする」ということです。採用におけるデータ分析も全く同じです。応募数を増やすことが目的ではありません。入社後のミスマッチを減らし、社員一人ひとりが生き生きと活躍し、結果として事業が成長すること。それこそが真のゴールなのです。

Webアナリストが「人事データ分析」でできること【誤解と真実】
「なるほど、データが重要なのは分かった。では、Webアナリストを雇えば解決するのか?」
そう考えるのは、ごく自然なことです。しかし、ここには一つ、大きな落とし穴があります。
それは、Webアナリストを単なる「ツールを操作できる人」「レポートを作る人」だと捉えてしまうことです。もちろん、Google Analyticsのようなツールを使いこなす技術は必要です。しかし、本当に価値のあるアナリストは、そこから一歩踏み込みます。
彼ら・彼女らは、バラバラに見えるデータの点と点を線でつなぎ、その裏にある「人の行動や感情のストーリー」を読み解くプロフェッショナルなのです。
1. 採用プロセスの「なぜ?」を解明する
多くの企業では、応募者数や内定承諾率といった「結果の数字」しか見ていません。しかし、優秀なアナリストは「なぜ、この媒体からの応募者は内定辞退率が高いのか?」「なぜ、二次面接で候補者の志望度が下がってしまうのか?」といった、プロセスの課題に光を当てます。
例えば、私たちが過去に支援したある企業では、サイト内のユーザー 行動 分析する「マイルストーン分析」という手法を採用活動に応用しました。候補者が採用サイトの「どのページ」を「どの順番」で見たときに、応募意欲が最も高まるのかを分析したのです。その結果、多くの候補者が給与や福利厚生よりも先に「社員インタビュー」のページを熟読しているという、意外な事実が判明しました。このインサイトに基づき、採用サイトの構成や広告メッセージを「人の魅力」を前面に押し出す形に切り替えたことで、採用の質が大きく向上しました。

2. 入社後の「ミスマッチ」を未然に防ぐ
採用で最も避けたいのは、時間とコストをかけて採用した人材が、早期に離職してしまうこと。アナリストは、従業員アンケートや勤怠データ、人事評価などを統合的に分析し、「離職の予兆」を客観的なデータとして可視化します。
「特定の部署で残業時間が増加傾向にある」「上司との1on1の頻度が低いチームほど、エンゲージメントスコアが低い」といった相関関係を見つけ出し、問題が深刻化する前に、具体的な打ち手を提案することができます。「使い勝手」の改善で変わるのは数%ですが、こうした組織の根本的な課題にメスを入れることで、ビジネスは大きく改善するのです。
3. 「勘」に頼らない人材育成・配置
データ分析は、未来を予測するためにも使えます。過去のハイパフォーマーたちの経歴、スキル、研修履歴などを分析することで、「どのような経験を積んだ人材が、次のリーダー候補になりうるか」という成功の再現性を高めるためのキャリアパスを設計できます。
これは、上司の個人的な期待や思い込みによる抜擢ではなく、データに基づいた客観的な人材配置を可能にします。結果として、社員の納得感を高め、組織全体のパフォーマンスを底上げすることに繋がるのです。
では、どうすれば自社の「人事・採用」を革新してくれるような、優秀なアナリストに出会えるのでしょうか。20年の経験から、私は採用の成否を分けるポイントは3つあると考えています。

視点1:求めるのは「翻訳家」。スキルリストだけの人物像は危険
「Google Analyticsが使える」「SQLが書ける」「Tableauで可視化できる」…こうしたスキルリストで候補者を絞り込むのは、よくある間違いです。もちろん技術は重要ですが、それだけでは不十分です。
かつて私も、技術的に非常に優秀なアナリストを採用したものの、事業に全く貢献できなかった苦い経験があります。彼は美しいレポートを作成できましたが、その数字が「ビジネスにとって何を意味するのか」を現場のメンバーや経営陣に説明することができませんでした。
本当に必要なのは、データを「事業の言葉」に翻訳できる翻訳家のような存在です。あなたの会社のビジネスモデルを深く理解し、データの裏にある顧客や候補者の心理を読み解き、そして「だから、私たちは次に何をすべきか」を、誰にでも分かる言葉で語れる人物。それこそが、真に求めるべきアナリスト像です。
視点2:選考では「過去の実績」より「未来の課題解決力」を問う
面接では、ぜひ「弊社のこの採用データを見て、あなたならどんな仮説を立て、どう分析し、経営陣に何を報告しますか?」と問いかけてみてください。
ここで見るべきは、完璧な答えではありません。その人がどのように課題を構造化し、どこに問題の本質を見出し、どんな思考プロセスで結論に至ろうとするか、その「課題解決能力」そのものです。

過去の成功体験を語ることは簡単です。しかし、ビジネスの世界は常に変化します。私たちが知りたいのは、過去に何をしたかではなく、未来に起こる未知の課題に、その人がどう立ち向かってくれるかなのです。ABテストで大事なのが「大胆かつシンプルな問い」であるように、採用でも候補者の本質に迫る問いが不可欠です。
視点3:アナリストを活かすも殺すも「組織文化」
最後に、そして最も重要なのがこの視点です。どんなに優秀なアナリストを採用しても、その提言を受け入れる組織文化がなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
「データよりも、長年の経験の方が正しい」「面倒な分析はいいから、すぐに答えを教えてくれ」。こんな声が上がる組織では、アナリストは疲弊し、やがてその能力を発揮できなくなります。過去、クライアントの組織的な抵抗を恐れて根本的な提案をためらい、結果として1年もの時間を無駄にしてしまった私の失敗は、まさにこの教訓を物語っています。
アナリストを採用するということは、会社全体で「データに基づいて意思決定する文化」を育てるという覚悟を決めることでもあります。アナリストに孤独な戦いをさせるのではなく、経営陣が率先してデータに耳を傾け、失敗を恐れずに新しい挑戦を歓迎する姿勢を見せることが、採用成功の最大の鍵なのです。
明日からできる、人事データ分析の「最初の一歩」
ここまで読んで、「なんだか、すごく大変そうだ…」と感じたかもしれません。ご安心ください。壮大なデータ基盤 構築したり、いきなり高額なツールを導入したりする必要はありません。

まずは、あなたの会社の中にすでに眠っている「宝の山」に気づくことから始めましょう。
その「最初の一歩」とは、採用プロセスに関わるデータを、一枚の紙に書き出してみることです。求人媒体の管理画面、応募者管理システム(ATS)、面接の評価シート、内定者アンケート、そして入社後の人事評価データ…。
それらのデータが、今どこに、どんな形式で存在しているのか。誰が管理しているのか。まずは全体像を「棚卸し」するだけで、これまで見えていなかった課題や、連携させれば価値が生まれそうなデータの組み合わせが、きっと見つかるはずです。
それは、複雑な分析ではありません。しかし、この地道な一歩こそが、あなたの会社を「勘と経験の採用」から脱却させ、データドリブンな組織へと変革していく、最も確実なスタートラインなのです。
もし、その過程で「どのデータに注目すればいいか分からない」「どう分析すれば事業の改善に繋がるのか見当がつかない」と感じたら、それは専門家の力を借りる良いタイミングです。私たちは、20年間データと向き合い、その裏にある「人の心」を読み解いてきました。あなたの会社のデータを、未来を切り拓くための「羅針盤」に変えるお手伝いができます。

人事・採用に関するデータ分析でお困りの際は、ぜひ私たち株式会社サードパーティートラストにお気軽にご相談ください。あなたの会社の状況を丁寧にヒアリングし、共に課題を解決していくための最適な戦略をご提案します。