BigQuery活用でビジネスを動かす。データ分析の「次の一手」が見つかる実践ガイド

株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。かれこれ20年以上、ウェブ解析という仕事を通じて、EC、メディア、BtoBなど、様々な業界の企業様とデータに向き合ってきました。

「データ分析が重要だと分かっているが、何から手をつければ…」
「BigQueryという言葉は聞くけれど、自社で使いこなせるイメージが湧かない」

こうした声は、経営者の方や現場のマーケターの方から、今も本当によくお聞きします。ツールを導入したものの、ただデータが蓄積されていくだけで、具体的なアクションに繋がらない。そんなもどかしい思いをされている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、Google Cloudが提供する「BigQuery」をテーマに、単なる機能紹介では終わりません。私が20年間、現場で貫いてきた「データから人の内心を読み解き、ビジネスを改善する」という哲学に基づき、BigQueryをいかにしてビジネスの「血肉」としていくか、その実践的な考え方と具体的なステップをお話しします。

この記事を読み終える頃には、あなたはBigQueryというツールの見方が変わり、データ分析で次の一手を打つための具体的なヒントを掴んでいるはずです。さあ、一緒にデータ活用の新たな扉を開きましょう。

ハワイの風景

BigQueryとは何か? なぜ今、ビジネスに必要なのか?

「BigQueryとは、大量のデータを高速に処理できるデータウェアハウスです」——もしあなたが他の解説記事を読んで、そう理解しているなら、それは半分だけ正解です。もちろん技術的にはその通りなのですが、ビジネスの現場で大切なのは、その先にある「だから何ができるのか?」という問いです。

私はよく、データ分析を料理に例えます。Webサイトや広告、CRMなどから集まるデータは、いわば「食材」です。そしてBigQueryは、どんな大量の食材も調理できる、広大で高性能な「業務用キッチン」のようなもの。しかし、いくら最高のキッチンと新鮮な食材があっても、「何を作るか」というレシピ(=分析設計)がなければ、美味しい料理(=ビジネスへの洞察)は生まれません。

多くの企業が陥るのが、この「キッチン」の導入だけで満足してしまうこと。大切なのは、そのキッチンを使って「お客様が本当に求めているものは何か」「ビジネスのどこに成長の芽があるのか」という問いに答えるためのレシピを作り、調理(=分析)し、味わい(=考察)、次のアクションに繋げることです。

私たちが創業以来、一貫して掲げてきた「データは、人の内心が可視化されたものである」という信条があります。BigQueryの真価は、このバラバラだった内心の断片(データ)を一つに集め、高速に処理することで、これまで見えなかった顧客のストーリーを浮かび上がらせる点にあるのです。

BigQuery活用のメリット:コスト削減の先にある「本当の価値」

BigQueryを導入するメリットとして、「コスト削減」「分析の効率化」「売上向上」がよく語られます。これらはもちろん事実ですが、その言葉の裏にある「なぜそうなるのか」を理解することが、活用の深度を決めます。

ハワイの風景

まず「コスト削減」。これは、使った分だけ支払う従量課金制の恩恵が大きいと言えます。しかし、本当の価値は、高価なサーバーの維持管理といった「データ分析以外の悩み」から解放される点にあります。これによって、エンジニアやマーケターは本来集中すべき「どうデータを活かすか」に時間と頭を使えるようになります。

次に「分析の効率化」。これまで数時間、場合によっては一晩かかっていた集計が、数秒から数分で終わる。このインパクトは絶大です。しかし、単に時間が短縮されるだけではありません。本当に重要なのは、「試行錯誤のサイクルを高速で回せる」ことです。

「このセグメントの顧客は、どんなコンテンツに興味があるだろう?」「あの広告経由のユーザーは、本当にコンバージョンしているのか?」——こうした仮説を、次から次へと瞬時に検証できる。このスピード感が、変化の速い市場で勝ち続けるための競争優位性になるのです。

そして「売上向上」。これは、効率化によって生まれた時間で、より深い顧客理解が可能になるからです。私が過去に担当したあるメディアサイトでは、どんなにバナーのデザインを変えても、サービスサイトへの遷移率が低いままでした。しかし、BigQueryでユーザーの閲覧履歴を詳細に分析し、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」を設置したところ、遷移率は15倍に跳ね上がりました。これは、見た目の美しさよりも「情報の文脈」が重要だという、ユーザーの内心をデータが教えてくれた好例です。

【実践事例】BigQueryはビジネス課題をどう解決するのか?

机上の空論ではイメージが湧きにくいでしょうから、私たちが実際にBigQueryを活用して、どのようにビジネス課題を解決してきたか、具体的なシナリオをいくつかご紹介します。

ハワイの風景

あるECサイトのクライアントは、「おすすめ機能」の精度が上がらずに悩んでいました。私たちは、GA4の行動データと購買データだけでは不十分だと考えました。そこで、私たちが独自に開発した「サイト内アンケートツール」とBigQueryを連携させました。

サイト内での行動に応じて「誰のために商品を探していますか?」「購入を迷っている点は何ですか?」といった質問を投げかけ、その回答(定性データ)をBigQuery上で行動データ(定量データ)と統合したのです。

その結果、「ギフトを探している男性」と「自分用に探している女性」では、同じ商品ページを見ていても、求めている情報が全く違うことが判明しました。このインサイトに基づき、レコメンドのロジックを修正したところ、コンバージョン率は目に見えて改善しました。これは、BigQueryという強力な基盤があったからこそ実現できた、「行動の裏にある内心」を捉えるアプローチです。

また、別のクライアントでは、広告効果の可視化が課題でした。各広告媒体の管理画面はバラバラで、全体像が掴めない。そこで、Google広告、Meta広告、さらにCRMの顧客データまで、すべてをBigQueryに集約しました。

これにより、「どの広告に接触した顧客が、最終的にLTV(顧客生涯価値)が高くなるのか」という、これまで誰も答えられなかった問いに答えられるようになりました。短期的なCPA(顧客獲得単価)だけでなく、事業全体の成長に貢献する広告がどれなのかをデータで示せたことで、マーケティング予算の配分を劇的に最適化することに成功しました。

ハワイの風景

その導入、待ってください。BigQuery活用で陥りがちな3つの罠

ここまでBigQueryの可能性についてお話ししてきましたが、強力なツールであるほど、使い方を間違えると大きな失敗に繋がります。20年の経験の中で、私は「こんなはずじゃなかった」という現場を数多く見てきました。導入を検討する前に、ぜひ知っておいてほしい「罠」があります。

罠1:とりあえずデータを全部入れる「ゴミ箱」化
「まずはデータを全部BigQueryに入れよう!」これは最も陥りやすい失敗です。目的なくデータを投入しても、それはただの「データ置き場」であり、価値を生みません。後から「あのデータはどこだっけ?」「この指標の定義は?」と混乱するだけです。導入前には必ず、「何を知るために、どのデータを、どんな構造で入れるのか」というデータ設計図を描く必要があります。

罠2:料金体系を理解せず使う「コスト沼」
BigQueryの料金は主にデータの保存量と、クエリ(分析)の処理量で決まります。この「処理量」が曲者で、非効率なクエリを一度実行しただけで、数万円の料金が発生することもあり得ます。「想定外の請求額に青ざめた…」という担当者の方を、私は何人も見てきました。クエリのプレビュー機能を使ったり、データをパーティション分割したりといった、コストを意識した作法を知っているかどうかで、運用コストは天と地ほど変わります。この点は、最新の情報を公式サイトで確認しつつ、慎重に進めるべきです。(※2025年6月時点の情報です。最新の料金体系は公式サイトをご確認ください)

罠3:データが貯まるのを待てない「焦り」
新しい仕組みを入れると、すぐに成果を期待したくなるのが人の常です。しかし、データ分析には「待つ」ことが非常に重要になる局面があります。かつて私も、データ蓄積が不十分と知りつつ、営業的なプレッシャーから不正確なデータで提案をしてしまい、クライアントの信頼を失いかけた苦い経験があります。データは正直ですが、不完全なデータは平気で嘘をつきます。正しい判断のためには、ノイズに惑わされず、データが語り始めるのを「待つ勇気」も必要なのです。

明日からできる、BigQuery活用のための「最初の一歩」

さて、ここまで読んで「やはり自社だけでは難しそうだ」と感じた方も、「俄然、挑戦したくなった」と感じた方もいらっしゃるでしょう。どちらの感想も、素晴らしい第一歩です。

ハワイの風景

BigQueryの活用は、壮大な山登りに似ています。いきなり山頂(=全社的なデータドリブン経営)を目指すのではなく、まずは麓の景色を楽しみ、自分の足で一歩ずつ進むことが大切です。もしあなたが、データ活用の旅を始めるなら、まずは以下の3つのことから試してみてください。

ステップ1:解きたい「問い」を一つだけ決める
ツールを触る前に、紙とペンを用意してください。そして、「データを使って、今一番知りたいことは何か?」を一つだけ書き出してみましょう。「なぜ優良顧客は離れてしまうのか?」「どのコンテンツが売上に繋がっているのか?」——そのたった一つの「問い」が、あなたのデータ分析の羅針盤になります。

ステップ2:データの「棚卸し」をしてみる
次に、その問いに答えるために必要そうなデータが、社内のどこに、どんな形で眠っているかリストアップしてみましょう。Google Analytics 4、スプレッドシートの顧客リスト、広告管理画面のCSVファイル…。それらが、あなたの料理の「食材」になります。完璧なリストでなくて構いません。まずは全体像を把握することが重要です。

ステップ3:GA4のデータを繋いでみる
もしあなたがGoogle Analytics 4(GA4)をお使いなら、幸運です。GA4は、数クリックでBigQueryにデータを無料でエクスポートできます。まずはこれを試し、いつもGA4の画面で見ている数値を、BigQuery上で再現してみましょう。この小さな成功体験が、大きな自信に繋がります。

この旅は、決して平坦な道ばかりではないかもしれません。データの壁、技術の壁、そして組織の壁にぶつかることもあるでしょう。

ハワイの風景

もし、あなたが立てた「問い」の解き方で迷ったり、散らばったデータをどう繋げばいいか分からなくなったり、あるいは、もっと大きなビジネスの絵図を描くためのパートナーが必要だと感じたなら、いつでも私たち、株式会社サードパーティートラストにご相談ください。

私たちは、あなたのビジネスとデータに真摯に向き合い、20年間培ってきた知見と技術で、あなたが山頂にたどり着くまで、すぐ隣で伴走することをお約束します。

まずは、あなたが解き明かしたい「ビジネスの問い」を、私たちに聞かせてください。そこから、すべてを一緒に始めましょう。

この記事は参考になりましたか?

WEB解析 / データ分析について、もっと知ろう!