情報漏洩で問われる損害賠償責任。あなたの会社は、本当に大丈夫ですか?
「もし、うちの会社の顧客情報が漏洩したら…」「ある日突然、高額な損害賠償請求が届いたら…」
企業の経営やマーケティングに携わるあなたにとって、情報漏洩は決して他人事ではない、現実的な脅威ではないでしょうか。ひとたび事故が起これば、その代償は計り知れません。金銭的な損失はもちろん、長年かけて築き上げてきたお客様からの信頼、ブランドイメージ、そのすべてが一瞬にして崩れ去る可能性を秘めています。
こんにちは。株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。私はこの道20年、ウェブ解析の専門家として、ECからBtoBまで、数多くの企業様のデータと向き合い、その裏側にあるビジネスの課題解決に奔走してきました。
私たちの信条は「データは、人の内心が可視化されたものである」というものです。そして情報漏洩とは、単なるデータが流出する事件ではありません。それは、お客様からお預かりした「信頼」そのものが漏れ出す、極めて深刻な事態なのです。
この記事では、小手先のセキュリティ対策や難解な法律の話に終始するつもりはありません。私が現場で見てきたリアルな事例、そして多くの企業が陥りがちな落とし穴を踏まえながら、あなたの会社を情報漏洩のリスクから守り、万が一の損害賠償を回避するための「本質的な考え方」と「具体的な打ち手」をお伝えします。読み終える頃には、漠然とした不安が、確かな次の一歩へと変わっているはずです。

なぜ損害賠償は高額化するのか?データではなく「信頼」を失う代償
情報漏洩が企業に与えるダメージは、システム復旧費用やお客様へのお詫びといった直接的なコストだけではありません。本当に恐ろしいのは、その後に続く「二次被害」です。
あるクライアント企業では、数万件の顧客情報が流出した結果、ブランドイメージが大きく毀損し、株価が下落。さらに、集団訴訟に発展し、最終的に数十億円規模の損害賠償という厳しい現実に直面しました。これは決して極端な例ではなく、個人情報保護法の厳格化や人々のプライバシー意識の高まりを背景に、賠償額は年々高騰する傾向にあります。
請求の対象となるのは、不正利用による金銭的被害だけではありません。自身の個人情報が知らない誰かの手に渡ってしまったことによる「精神的苦痛」に対する慰謝料も、大きな割合を占めるようになっています。これは、データが「人の内心」の表れである以上、当然のことと言えるでしょう。
法的根拠としては、民法709条の不法行為や個人情報保護法が挙げられます。特に注意すべきは、従業員のミスが原因であったとしても、企業は「使用者責任」を問われる点です。つまり、「担当者がやったことだから」という言い訳は通用しないのです。だからこそ、付け焼き刃の対策ではなく、組織全体で情報漏洩を防ぐための仕組み=データガバナンスが、今ほど重要になっている時代はありません。
情報漏洩のリアル:現場で見た「まさか」の事例
20年この仕事をしていると、本当に様々な情報漏洩の現場に立ち会うことになります。その多くは、決して特別な誰かが悪意を持って引き起こしたものではありません。むしろ、日常業務に潜む、ほんの些細な「穴」から発生しているのです。

事例1:善意が招いた、メール誤送信の悲劇
ある営業担当者は、お客様へのフォローメールを送る際、誤って全顧客リストが記載されたファイルを添付してしまいました。もちろん悪意は一切ありません。しかし、一度インターネットの海に流れ出てしまった情報は、完全には取り戻せません。結果として、企業は一人ひとりのお客様へ謝罪行脚をすることになり、その対応コストと信用の失墜は計り知れないものでした。
ここで陥りがちなのが、「従業員教育を徹底します」という精神論で終わらせてしまうことです。人は誰でもミスをします。本当に必要なのは、個人の注意深さに依存するのではなく、そもそもミスが起きない、あるいは起きても被害が最小限になる「仕組み」を導入することです。
事例2:便利さの裏側にあった、退職者アカウントの罠
別の企業では、退職した従業員のアカウントが削除されずに放置されていました。業務の引継ぎを優先するあまり、セキュリティ管理が後回しになっていたのです。この放置されたアカウントが不正アクセスの侵入口となり、内部情報がごっそりと抜き取られてしまいました。
これは、私が過去に経験した失敗とも重なります。クライアントの担当部署が多岐にわたり、組織的な抵抗を恐れて「言うべきこと」を言わなかった結果、本質的な課題が1年以上も放置され、大きな機会損失を生んでしまったことがあります。セキュリティも同じです。耳の痛いことであっても、事業継続に関わる根本的なリスクについては、断固として指摘し、改善する勇気が求められます。
損害賠償リスクを根絶する「データガバナンス」という羅針盤
では、どうすれば情報漏洩を防ぎ、万が一の損害賠償リスクから会社を守れるのでしょうか。その答えが「データガバナンス」の構築です。

難しく聞こえるかもしれませんが、データガバナンスは、いわば「社内データの交通整理」のようなものです。誰が、いつ、どのデータにアクセスし、どのように利用して良いのか。そのルールを明確にし、管理・運用する体制そのものを指します。
これは、高価なセキュリティソフトを導入すれば終わり、という話ではありません。むしろ、会社の文化や組織体制にまで踏み込む、経営マターの取り組みです。私が常々「数値の改善ではなく、ビジネスの改善を」と申し上げるのは、まさにこの点にあります。情報漏洩のリスクは、Webサイトの使い勝手のように数%の改善で済む話ではないからです。ビジネスの根幹を揺るがす問題だからこそ、表面的な対策ではなく、根本的な原因にアプローチする必要があるのです。
データガバナンス 構築の現実的なステップ
データガバナンスの構築は、壮大な山登りに似ています。いきなり頂上を目指すのではなく、着実に一歩ずつ進めることが成功の鍵です。
- ステップ1:現状把握という「健康診断」
まず、あなたの会社が「どのような個人情報を」「どこに」「どれだけ」保有しているのかを正確に把握することから始めます。驚くほど多くの企業が、この現状把握すらできていません。各部署がバラバラに顧客リストを保管している、なんてことは日常茶飯事です。まずは社内のデータを棚卸しし、リスクを可視化しましょう。 - ステップ2:役割と責任の明確化
次に、データの管理責任者を誰にするのか、各部署の役割分担をどうするのかを決めます。責任の所在を曖昧にしないことが、ガバナンスの第一歩です。 - ステップ3:シンプルで守れるルールの策定
ここで重要なのは、完璧で複雑なルールを作らないことです。私が過去に、高度すぎる分析手法を提案してしまい、現場で全く活用されなかった失敗をしたように、どんなに優れたルールも、現場の担当者が理解し、実践できなければ意味がありません。まずは「これだけは守る」というシンプルなルールから始めましょう。 - ステップ4:ツールの適切な活用と継続的な改善
アクセスログの監視ツールやデータ暗号化ツールなど、技術の力を借りることも有効です。ただし、これも「自社の課題と規模に合ったもの」を選ぶことが肝心です。そして一度構築したら終わりではなく、定期的に監査を行い、時代の変化に合わせてルールを見直し続ける「待つ勇気」と「改善し続ける姿勢」が不可欠です。
データガバナンス導入のよくある失敗とその対策
これほど重要なデータガバナンスですが、残念ながら導入に失敗するケースも後を絶ちません。その最大の原因は、「経営層のコミットメント不足」です。
「それは情報システム部門の仕事だろう」と現場に丸投げしてしまっては、絶対に成功しません。データガバナンスは、全社を巻き込む一大プロジェクトです。経営トップが「なぜこれが必要なのか」を自らの言葉で語り、強いリーダーシップを発揮することが成功の絶対条件です。

また、「高機能なツールを導入したものの、使いこなせない」というのも典型的な失敗パターンです。大切なのは、ツールありきで考えるのではなく、「自社が守るべきものは何か」「そのために、どのような管理体制が必要か」という目的から逆算して考えることです。私が常々、施策の優先順位を「コストが低く、改善幅が大きいものから」と申し上げているのは、ここにも通じます。見栄えの良い高価な提案より、地味でも着実に実行できる施策の方が、よほど価値があるのです。
明日からできる、損害賠償リスクに備えるための「最初の一歩」
ここまで、情報漏洩と損害賠償、そしてその根本対策であるデータガバナンスについてお話してきました。もしかしたら、「自分の会社には、まだまだハードルが高い…」と感じられたかもしれません。
ですが、ご安心ください。どんなに壮大な改革も、始まりはたった一つの小さな一歩です。
もしあなたが、自社の情報管理に少しでも不安を感じているのなら、明日からできる「最初の一歩」を、ぜひ試してみてください。それは、あなたの部署で管理している「顧客情報」や「個人情報」が含まれるファイルやデータを、ただリストアップしてみる、ということです。
エクセルファイル、共有サーバー、クラウドストレージ、紙の書類…。どこに、どんな情報があるのか。まずはそれを「知る」こと。それが、あなたの会社を未来の情報漏洩リスクと損害賠償の悪夢から救う、最も重要で、最も確実なスタートラインになります。

そのリストを眺めてみて、「これは本当に安全に管理できているだろうか?」と少しでも疑問に思ったら、それは専門家の助けを借りるべきサインかもしれません。私たち株式会社サードパーティートラストは、単なるツールや解決策を売る会社ではありません。20年間、お客様のビジネスに寄り添い、データと共に課題を乗り越えてきた「伴走者」です。
あなたの会社の状況を丁寧にヒアリングし、現実的に実行可能なロードマップを共に描きます。まずはお気軽にご相談ください。あなたの会社が安心して事業を続けられるよう、私たちが持つすべての知見と経験をもって、全力でサポートさせていただきます。