RPA 導入後の「こんなはずじゃ…」をなくす。データで業務を育てる、本当のRPA運用保守とは
「鳴り物入りでRPAを導入したのに、現場の負担がなぜか減らない…」
「エラーで止まってばかりで、結局、以前の手作業に戻ってしまった…」
もし、あなたが今、このような悩みの渦中にいるのなら。その感覚は、私たちが20年間、ウェブ解析の現場で数えきれないほど耳にしてきた「多額の投資をしてサイトを作ったのに、全く成果が出ない」という悲痛な叫びと、驚くほどよく似ています。
こんにちは。株式会社サードパーティートラストで、ウェブ解析のアナリストを務めている者です。私たちは創業以来15年間、「データは、人の内心が可視化されたものである」という信条を胸に、ECからBtoBまで、あらゆる業界のビジネス改善に携わってきました。
一見、畑違いに思えるかもしれません。しかし、私たちにとってRPAのエラーログや稼働データは、ウェブサイトのアクセスログと何ら変わりません。それは単なる数字の羅列ではなく、非効率な業務プロセスが上げている悲鳴であり、現場の担当者が発している「助けてほしい」という声なのです。
この記事では、RPAを「導入して終わり」の"置き物"にせず、あなたのビジネスを力強く成長させる"相棒"へと育てるための、本質的な「RPA運用保守」について、データ分析のプロとしての経験と哲学を交えながら、具体的にお話ししていきます。

なぜRPAは「期待外れ」に終わるのか? 運用保守の本当の意味
多くの企業でRPAプロジェクトが期待外れに終わる根本的な原因は、たった一つの誤解に集約されます。それは、「RPAを一度設定すれば、永遠に正確に動き続ける魔法の機械だ」と考えてしまうことです。
しかし、現実は全く違います。私は、RPAを「精密機械であると同時に、環境の変化に非常に弱い生き物」のようなものだと捉えています。
例えば、連携しているアプリケーションの仕様変更、ウェブサイトのレイアウト更新、社内業務フローのわずかな見直し…。こうした人間にとっては些細な環境変化で、RPAは驚くほど簡単に動けなくなってしまうのです。
RPA運用保守とは、決して単なる「エラー監視」や「メンテナンス」ではありません。この繊細な「生き物」が常に元気に、そして賢く働き続けられるように、日々その健康状態に気を配り、外部環境の変化に適応させ、成長を促していく「育成活動」そのものなのです。
私たちの哲学に「数値の改善を目的としない。ビジネスの改善を目的とする」という言葉があります。RPAの稼働率という数値を追いかけるだけでは意味がありません。RPAによって、あなたの会社のビジネスがどう改善されたのか。その一点を目的としなければ、どんなに高価なツールも宝の持ち腐れになってしまいます。

RPAを「育てる」ための具体的な3ステップ
では、具体的にRPAを「育てる」とは、何をすればよいのでしょうか。私たちは、RPA 運用保守を大きく3つのステップで考えています。それは「健康診断」「手入れと治療」「能力開発」です。
ステップ1:監視(日々の健康診断)
これは、ロボットが正常に動いているか、エラーを起こしていないかを見守る、最も基本的な活動です。しかし、重要なのは単に動いているか死んでいるか(死活監視)を確認するだけではありません。
処理時間、成功率、エラー発生頻度といったデータを定点観測し、「いつもより処理に時間がかかっているな」「なぜか毎週水曜の午後にエラーが多発する」といった変化の兆候を捉えることが、データ分析の第一歩です。これが、大きなトラブルを未然に防ぐための「健康診断」となります。
ステップ2:メンテナンス(手入れと治療)
健康診断で異常が見つかれば、すぐに対処が必要です。エラーの原因を特定し、修正するのは「治療」にあたります。
また、業務プロセスの変更やシステムのアップデートに合わせて、RPAのシナリオを修正していくのは、環境変化に対応させるための「手入れ」です。これを怠ると、RPAはあっという間に時代遅れになります。

かつて、あるお客様のメディアサイトで、どんなにリッチなバナーを作っても遷移率が上がらない、という課題がありました。私たちは、見栄えにこだわらず、記事の文脈に合わせたごく普通の「テキストリンク」への変更を提案。結果、遷移率は15倍に向上しました。RPAも同じです。複雑なシナリオを必死に修正し続けるより、業務プロセスそのものを見直した方が、はるかに早く、安く、効果的な場合があるのです。
ステップ3:改善(能力開発と教育)
RPA運用保守の最終目的は、現状維持ではありません。RPAをさらに賢く、有能にしていく「能力開発」です。
「この業務も、RPAに任せられるのではないか?」
「複数のロボットを連携させれば、もっと大きな成果が出せるかもしれない」
こうした改善の種を見つけるためにも、データは不可欠です。しかし、ここで一つ注意点があります。私には、画期的な分析手法を開発したものの、お客様のデータリテラシーを考慮しなかったために、全く活用されなかったという苦い失敗経験があります。RPAの稼働レポートも同じです。経営層、現場担当者など、そのレポートを見る人が理解し、次のアクションに繋がる形でなければ、自己満足の分析で終わってしまいます。
データ分析が拓く、一歩先のRPA運用保守
RPA運用保守を「勘と経験」に頼る時代は終わりました。これからは、データを羅針盤として、客観的な事実に基づいた改善サイクルを回していく必要があります。

そのために不可欠なのが、RPAの稼働状況を誰もが直感的に理解できる「ダッシュボード」です。私たちが構築を推奨するダッシュボードでは、主に以下のような項目を可視化します。
- ロボットごとの稼働時間と成功・失敗率
- エラーの種類と発生頻度、その傾向
- 業務プロセスごとの処理時間(ボトルネックの特定)
- RPA化によって削減できた工数(費用換算での貢献度)
かつて私たちは、複雑すぎるページ遷移図から本質を見抜くため、重要なポイントだけを繋いで可視化する「マイルストーン分析」という手法を開発しました。RPAも同じ発想です。業務プロセス全体の流れの中で、どこがボトルネックになっているのかをデータで特定することで、打つべき施策は自ずと明確になります。
さらに、RPAの稼働データを、売上データや顧客データといった他のビジネスデータと掛け合わせることで、RPAがビジネスに与えている真のインパクトを測定し、より戦略的な投資判断を下すことも可能になるのです。
成功と失敗の分水嶺 ― RPA運用保守を成功させる組織とは
ツールの性能以上に、RPAの成否を分けるのは「組織のあり方」です。ここでは、多くの企業が陥りがちな失敗する組織と、成功する組織の特徴を対比してみましょう。
【失敗する組織】

- 属人化:特定の担当者しかRPAを触れず、その人が異動・退職した途端、誰も分からない「ブラックボックス」と化す。
- 場当たり的:明確な運用ルールがなく、問題が起きてから場当たり的に対応するため、常に後手に回る。 - サイロ化:導入した部署だけで情報を抱え込み、全社的な業務改善に繋がらない。
【成功する組織】
- チーム体制:たとえ兼務であっても、役割分担が明確なチームで運用にあたっている。
- ルールと文書化:誰が、いつ、何をするかというシンプルなルールと、変更履歴などのドキュメントが常に最新の状態に保たれている。
- 定期的なレビュー:関係部署を交えたレビュー会議を定期的に開催し、成果を共有し、次の改善策を全員で話し合っている。
私自身、お客様の組織的な事情を忖度し、言うべき根本的な提案を避けた結果、一年後も状況が全く変わらず、大きな機会損失を生んでしまった経験があります。RPA化の本当の障壁が「組織の壁」や「業務の聖域化」にあるのなら、アナリストはそこから目を背けてはいけません。もちろん、相手の文化を無視した「正論」は無価値です。しかし、顧客の現実を深く理解した上で、実現可能なロードマップを描き、避けては通れない課題については伝え続ける。このバランス感覚こそが、ビジネスを動かすと信じています。
RPA運用保守は「費用」ではなく「未来への投資」
RPA運用保守には、人件費やツールのライセンス料、あるいは外部委託費といったコストがかかります。そのため、一部では「コストセンター」と見なされてしまうことも少なくありません。
しかし、私たちは、この考え方を根本から変える必要があると訴えています。RPA運用保守は「コスト」ではありません。それは、あなたの会社の生産性を高め、競争力を強化し、未来の利益を生み出すための、極めて重要な「投資」なのです。
費用対効果を考える際も、単純に「削減できた人件費」という直接的な効果だけで判断してはいけません。単純作業から解放された従業員が、より創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになった時間。ヒューマンエラーの削減によって守られた企業の信用。これら全てが、RPA投資がもたらす大きなリターンなのです。

特に、社内に運用ノウハウが蓄積されていない導入初期の段階では、外部の専門家の力を借りることも、非常に賢明な選択肢の一つです。遠回りに見えて、結果的にそれが最も確実で、コストパフォーマンスの高い近道になるケースは決して少なくありません。
明日からできる、最初の一歩
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。RPAは、放置すればあなたの会社を蝕むコストセンターになり、愛情を持って育てれば、これ以上なく頼もしいビジネスパートナーになります。
もし、あなたの会社でRPAの運用保守に課題を感じているなら、まずは難しく考えずに、明日からできる「最初の一歩」を踏み出してみませんか?
- 今、あなたの会社で動いているRPAが、最後にいつ、誰によってメンテナンスされたか、記録を確認してみましょう。
- エラーが発生した際のログが、どこかに保管されているかを探してみましょう。
- RPAの運用について、チームで5分だけでも話す時間を作ってみましょう。「最近、調子どう?」と声をかけるだけでも構いません。
もし、この最初の一歩が難しい、何から手をつけていいか皆目見当もつかない、と感じたなら。それは、専門家の助けを借りるべきサインなのかもしれません。
私たち株式会社サードパーティートラストは、単にツールを管理するだけのサービスは提供していません。あなたの会社の「業務」と「データ」を深く理解し、その裏にある「人の想い」を読み解きながら、RPAをビジネス成長のエンジンに変えるお手伝いをします。

私たちの20年の経験と知見が、あなたの会社の力になれると確信しています。「まずは話だけでも聞いてみたい」という段階でも全く問題ありません。下記より、どうぞお気軽にご連絡ください。