「SEO対策は、まずキーワード選定から」。そう聞いてはみたものの、一体何から手をつければいいのか、途方に暮れていませんか?
ツールを前にして大量の候補リストに圧倒されたり、選んだキーワードが本当に正しいのか不安になったり。「アクセスが増えないのは、キーワードが悪いからだ」と、出口の見えない迷路に迷い込んでしまったような感覚。ウェブサイトの担当者であれば、誰もが一度は通る道かもしれません。
こんにちは、株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。私は20年間、ECサイトからBtoB、大手メディアまで、あらゆる業界のウェブサイトをデータと共に立て直してきました。その経験から断言できることがあります。それは、多くの企業がキーワード選定を「単語を探す作業」だと誤解している、ということです。
私たちが創業以来、一貫して掲げてきた信条は「データは、人の内心が可視化されたものである」というものです。検索窓に打ち込まれるキーワードは、単なる文字列ではありません。それは、顧客一人ひとりの悩みや願い、知りたいという切実な想いの表れなのです。この視点を持つだけで、キーワード選定は「作業」から「顧客との対話」へと変わります。
この記事では、小手先のテクニックやツールの使い方に終始するのではなく、あなたのビジネスを本質的に改善するための「キーワード選定の哲学」と、明日から実践できる具体的なステップをお伝えします。読み終える頃には、あなたはキーワードという羅針盤を手に、自信を持って次の一歩を踏み出せるはずです。

なぜ、あなたのキーワード選定は空振りで終わるのか?よくある3つの落とし穴
一生懸命キーワードを選んでコンテンツを作っても、なぜか成果に繋がらない。その背景には、多くの担当者が見過ごしがちな共通の「落とし穴」があります。私自身も過去、痛い失敗を繰り返しながら、この落とし穴の存在に気づかされました。
落とし穴1:大きなキーワードばかりを追いかけてしまう
「とにかくアクセスを増やしたい」という想いから、「不動産」「化粧品」のような、検索ボリュームが非常に大きい「ビッグキーワード」ばかりを狙ってしまうケース。これは、最もよくある失敗の一つです。
例えるなら、装備も整えずにいきなり日本一の山に挑戦するようなもの。そこには強力なライバルがひしめき合っており、上位表示は至難の業です。結果として、時間と労力をかけても誰の目にも留まらず、徒労に終わってしまう可能性が高いのです。
落とし穴2:ツールが出す「数字」を鵜呑みにしてしまう
キーワードプランナーなどのツールは非常に優秀ですが、使い方を間違えると危険な罠になります。表示される「検索ボリューム」や「競合性」といった数字だけを信じ、戦略を立ててしまうのです。
かつて私も、クライアントからの期待に応えようと焦るあまり、蓄積が不十分なデータから「見栄えの良い」提案をしてしまった苦い経験があります。翌月、正しいデータが揃うと全く違う傾向が見え、信頼を大きく損ないました。ツールが示す数字はあくまで過去のデータ。その裏にあるユーザーの「なぜ?」を考えなければ、本質は見えてきません。

落とし穴3:「自社の言いたいこと」をキーワードにしてしまう
業界用語や、自社がアピールしたい専門的な製品名。これらは社内では当たり前に使われる言葉かもしれませんが、お客様が同じ言葉で検索するとは限りません。
大切なのは、「自分たちがどう呼ばれたいか」ではなく、「お客様がどんな言葉で悩みを表現しているか」です。この視点の転換ができないと、企業と顧客の間に深い溝が生まれ、せっかくの価値ある情報も届かなくなってしまいます。
「検索ボリューム」の罠と、私たちが本当に見るべきもの
では、私たちはキーワードの向こうに何を見るべきなのでしょうか。それは、繰り返しになりますが「ユーザーの内心」です。私たちはキーワードを、その意図の具体性に応じて、大きく3つの階層に分けて考えます。これは、顧客との距離感を測るための地図のようなものです。
【ビッグキーワード(認知層向け)】
例:「seo対策」「マーケティング」
検索ボリュームが大きく、まだ悩みや目的が漠然としている層が使います。ここを狙うのは、いわば街のど真ん中に大きな看板を出すようなもの。多くの人の目に触れますが、すぐに買ってくれる人は少ないでしょう。
【ミドルキーワード(検討層向け)】
例:「seo対策 費用」「マーケティング会社 おすすめ」
少し目的が具体的になり、情報収集や比較検討を始めている層です。ビッグキーワードに、目的や課題を表す言葉が加わります。「そろそろ専門家に相談してみようか」と考え始めた人たちですね。

【スモールキーワード(顕在層向け)】
例:「seo対策 費用 見積もり 東京」「b2b マーケティング会社 中小企業」
悩みや目的が非常に具体的で、「今すぐ解決したい」という意欲が高い層です。検索ボリュームは小さいですが、一人ひとりの熱量は非常に高い。まるで、「〇〇で困っているのですが、助けてくれませんか?」と、あなたの会社のドアをノックしているような状態です。
重要なのは、これらのキーワードをバランス良く配置し、戦略を組み立てること。ビッグキーワードであなたを知ってもらい、ミドルキーワードで興味を深めてもらい、そしてスモールキーワードで具体的な課題を解決する。この一連の流れを設計することが、ビジネスを動かすキーワード戦略の第一歩なのです。
ビジネスを動かすキーワード選定、プロが実践する3つのステップ
キーワード選定は、闇雲に探す宝探しではありません。明確な目的意識と手順に沿って進める、極めて論理的なプロセスです。ここでは、私が20年の現場で磨き上げた、事業改善に直結するキーワード選定の3ステップをご紹介します。
ステップ1:顧客との対話の「起点」を探す(自社理解)
まず、ツールを開く前に、あなた自身のビジネスについて深く掘り下げます。考えていただきたいのは、たった一つの問いです。
「私たちは、誰の、どんな悩みを、どうやって解決できるプロなのか?」

この問いに即答できないなら、キーワード選定を始めるのはまだ早いかもしれません。自社の強み、提供できる独自の価値、そして理想のお客様像を明確に言語化すること。これが、全ての戦略の揺るぎない土台となります。
ステップ2:顧客の「声」を拾い集める(検索意図の深掘り)
土台が固まったら、いよいよ顧客の声、つまりキーワードを具体的に探していきます。ここで初めて、Googleキーワードプランナーや各種SEOツールが活躍します。
しかし、ただ候補をリストアップするだけでは不十分。大切なのは、それぞれのキーワードの裏にある「検索意図」を想像することです。「seo 費用」と検索する人は、料金の相場を知りたいのか、具体的な見積もりが欲しいのか、あるいは費用対効果を気にしているのか。その文脈によって、提供すべきコンテンツは全く異なります。
ツールはあくまで「発想のヒント」です。実際にそのキーワードで検索し、上位に表示されるサイトがどんな問いに答えているかを確認しましょう。そこには、ユーザーが本当に求めていることへの答えが隠されています。
ステップ3:「戦う場所」と「勝ち筋」を決める(競合分析と優先順位付け)
キーワード候補が出揃ったら、最後に「どのキーワードで、どう戦うか」を決めます。ここで重要なのが、「コストが低く、改善幅が大きいものから優先的に実行する」という原則です。

全てのキーワードで1位を目指す必要はありません。自社のリソース(時間、予算、人員)を考慮し、現実的に上位表示が狙え、かつビジネスインパクトが大きい「勝てる場所」を見極めるのです。
例えば、競合がひしめくビッグキーワードに挑むより、まだ誰も気づいていないスモールキーワードで確実に1位を取り、そこから着実に成果を積み上げていく。そうした現実的なロードマップを描くことが、遠回りに見えて、実は成功への一番の近道なのです。
選んだキーワードを「事業資産」に変える技術
素晴らしいキーワードリストが完成しても、それだけでは絵に描いた餅です。そのキーワードをどうWebサイトに反映させ、血の通った「事業資産」に変えていくか。ここでは、テクニックを超えた本質的な考え方をお伝えします。
キーワードは「詰め込む」のではなく「応える」もの
よく「タイトルや見出しにキーワードを入れましょう」と言われますが、これは目的と手段が入れ替わった考え方です。正しくは、「ユーザーがそのキーワードで検索した時に抱いている疑問に、コンテンツ全体で誠実に答える」ことです。
その結果として、自然とタイトルや見出し、本文にキーワードや関連する言葉が含まれてくる。この順番が非常に重要です。キーワードの出現率を気にするあまり、不自然で読みにくい文章になっては、本末転倒です。

「見栄えの良いバナー」が「地味なテキストリンク」に負ける理由
かつて、あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの遷移率が伸び悩んでいました。担当者は必死にリッチなバナーデザインをいくつも試しましたが、結果は芳しくありませんでした。
そこで私たちが提案したのは、たった一つ。「記事の文脈に合わせた、ごく自然なテキストリンクに変えましょう」という、非常に地味なものでした。結果、遷移率は0.1%から1.5%へと15倍に向上しました。ユーザーにとって重要だったのは、派手なデザインではなく、「今読んでいる情報と関連が深い」とわかる自然な導線だったのです。キーワード選定も、これと全く同じです。見栄えやテクニックではなく、ユーザーの文脈に寄り添うことが何よりも大切です。
明日からできる、最初の一歩
さて、ここまでキーワード選定の考え方についてお話してきました。理論は分かったけれど、具体的に何から始めればいいか、迷われるかもしれません。
そこで、あなたに試していただきたい「最初の一歩」があります。
まず、紙とペンをご用意ください。そして、「もしお客様が、あなたの会社のサービスを誰かに一言で説明するとしたら、どんな言葉を使うだろう?」と考えて、3つほどキーワードを書き出してみてください。社内の専門用語ではなく、お客様が使うであろう「生きた言葉」です。

書き出せましたか?では次に、そのキーワードで実際に検索してみてください。上位にはどんなサイトが表示されていますか?彼らは、どんな悩みを持つ人に向けて、どんな答えを用意しているでしょうか?
この簡単なワークだけでも、あなたのビジネスを客観的に見つめ直し、顧客の視点を手に入れる大きなヒントが得られるはずです。
キーワード選定とは、顧客を深く理解しようとする姿勢そのものです。その探求の先にこそ、ビジネスの成長があります。もし、この分析の過程で壁にぶつかったり、専門家の客観的な視点が欲しくなったりした際には、いつでも私たちにご相談ください。データという顧客の声に耳を澄ませ、あなたのビジネスを成功へと導くお手伝いをさせていただきます。
まずは、あなたの現状の課題や想いを、私たちに聞かせていただけませんか。無料相談はこちらから承っております。