こんにちは。株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。Web解析の世界に身を置いて20年、ECサイトからBtoB、メディアまで、様々な業界でデータと向き合い、事業を立て直すお手伝いをしてきました。

Web解析の現場で、こんな壁に突き当たっていませんか?

「データは毎日見ているのに、次の一手が見えない…」
KPI 設定したはいいが、どうも達成できる気がしない…」
「そもそも、今の分析が本当にビジネスの成果に繋がっているのか確信が持てない…」

もし、こうした漠然とした不安や停滞感を感じているなら、その原因は日々の分析手法ではなく、もっと手前の「設計図」にあるのかもしれません。この記事では、その設計図、すなわち「プロジェクト計画表」が、いかにしてWeb解析・データ分析を劇的に変える力を持つのか、私の経験を交えながら具体的にお話しします。

航海の羅針盤、「プロジェクト計画表」がなぜ必要なのか?

「プロジェクト計画表」と聞くと、少し堅苦しい管理書類を思い浮かべるかもしれません。しかし、私にとってこれは、ビジネスという終わりのない航海における、唯一無二の「海図」であり「羅針盤」です。

ハワイの風景

データ分析の世界は、まるで広大な海。やみくもに漕ぎ出しても、どこにも辿り着けません。それどころか、目の前の数字という波に翻弄され、いつの間にか目的を見失ってしまう。そんな担当者の方を、私は数多く見てきました。

計画表の役割は、「ビジネスの成功」という目的地(KGI)への最短ルートを可視化することにあります。そして、その過程で「何を」「誰が」「いつまでに」行うのかを明確にし、限られたリソース(時間、人、予算)を最適に配分するための道しるべとなるのです。

私が信条としているのは、「データは、人の内心が可視化されたものである」という考え方です。計画表を作ることは、単なるタスク 管理ではありません。それは、データという形で現れるお客様の「内心」と向き合い、ビジネスをどう改善していくかという物語の脚本を書く作業なのです。この脚本がなければ、どんな名優(優秀な分析 ツールや担当者)がいても、感動的な結末(ビジネスの成功)には辿り着けません。

失敗から学ぶ、計画表を構成する「生きた」要素

優れたプロジェクト計画表は、単なるタスクリストではありません。プロジェクトを成功へ導くために、血の通った要素で構成されている必要があります。ここでは、私たちが実践で磨き上げた、計画表に盛り込むべき本質的な要素をご紹介します。

1. 目的・目標(KGI/KPI):それは誰の、どんな課題を解決するのか?
まず、このプロジェクトが「何のために」存在するのかを定義します。「CVRを5%改善する」といった数値目標(KPI)はもちろん重要です。しかし、私たちがそれ以上に重視するのは、「その結果、ビジネス全体がどう良くなるのか?」という視点(KGI)です。数値の改善が目的化すると、本質を見失います。常にビジネスの改善という山頂を見据えることが、全ての始まりです。

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2. タスク分解(WBS):複雑な山道を、歩きやすい小道に
目標という山頂が決まったら、そこへ至る登山ルートを具体的に描きます。これがWBS(Work Breakdown Structure)です。ここで陥りがちなのが、タスクを大雑把に捉えてしまうこと。「現状分析」「施策立案」「効果測定」だけでは、担当者は途方に暮れてしまいます。
「GA4で特定のセグメントの行動を分析する」「ヒートマップで離脱箇所を特定する」「A/Bテストの仮説を3つ立てる」というように、誰が見ても具体的なアクションがイメージできるレベルまで分解することが、プロジェクトを動かす原動力になります。

3. スケジュールと担当者:チームで進むためのペース配分
各タスクに「いつまでに」「誰が」責任を持つのかを割り当て、ガントチャートなどで可視化します。これにより、個々のタスクの遅れがプロジェクト全体にどう影響するかが一目瞭然となり、先手を打った対応が可能になります。私も過去に、データ蓄積が不十分なまま分析を急かされ、誤った提案で信頼を失った苦い経験があります。正しい判断のために「待つ勇気」が必要な期間も、あらかじめ計画に盛り込んでおくことが、データを扱う者の誠実さだと考えています。

4. リスク管理:想定外という「嵐」への備え
「主要メンバーが離脱したら?」「ツールの仕様が変更されたら?」「想定した効果が出なかったら?」プロジェクトにリスクはつきものです。事前に考えうるリスクを洗い出し、「もし起きたらどう対応するか」を予め決めておくだけで、いざという時の冷静さと対応速度が全く変わってきます。これは、航海の途中で出会う嵐への、いわば「避難計画」です。

明日からできる、計画表作成の3ステップ

では、具体的にどうやって計画表を作れば良いのでしょうか。難しく考える必要はありません。まずは、この3つのステップから始めてみてください。

ステップ1:目的地を定める(目標設定)
まずは、あなたのチームが今、最も解決したいビジネス課題を一つだけ、紙に書き出してみてください。そして、その課題が解決された「理想の状態」を具体的に言葉にします。これがプロジェクトの「目的」になります。例えば、「問い合わせが少なく、営業機会を損失している」という課題なら、「Webサイト経由の有効な問い合わせ件数を、3ヶ月で月間50件にする」といった形です。

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ステップ2:やるべきことを洗い出す(タスクの洗い出し)
次に、その理想の状態に到達するために「やるべきこと」を、思いつくままに付箋などに書き出していきます。この段階では、順番や粒度は気にしなくて構いません。「現状のフォームの離脱率を調べる」「競合サイトのフォームを調査する」「入力項目を減らせないか検討する」など、とにかくたくさん出すことが重要です。これは、複雑な問題をシンプルに分解していくための第一歩です。

ステップ3:地図に落とし込む(時間軸と担当者を決める)
書き出したタスクを、時間軸に沿って並べ替え、それぞれの担当者を決めます。Excelやスプレッドシートで十分です。どのタスクを先にやらないと次へ進めないか(依存関係)を意識すると、より精度の高いスケジュールが引けます。このシンプルな表が、あなたのチームの羅針盤になります。

計画表がもたらす、3つの確かなメリット

手間をかけて計画表を作ることで、具体的にどんな良いことがあるのでしょうか。それは、単にプロジェクトがスムーズに進むだけではありません。

1. 無駄なコストと時間の削減
計画が明確になることで、リソースの無駄遣いが劇的に減ります。特にWeb解析では、「とりあえずデータを眺める」という非生産的な時間が生まれがちです。目的がはっきりしていれば、見るべきデータ、やるべき分析が明確になり、最短距離で結論にたどり着けます。

2. チームの意思統一と生産性向上
「私たちは、今、どこに向かっているのか」が全員で共有されると、チームの動きは驚くほど変わります。担当者間の連携がスムーズになり、議論も具体的になります。過去に私が担当したあるプロジェクトでは、計画表を導入したことで部署間の壁がなくなり、これまで停滞していた施策が次々と実行に移されました。

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3. データに基づいた「質の高い」意思決定
計画表は、PDCAサイクルを回すための土台です。施策の結果を計画と照らし合わせて評価することで、「なぜ上手くいったのか」「なぜ失敗したのか」という学びが蓄積されます。この学びこそが、次の施策の成功確率を高める、何よりの資産となるのです。感覚や思い込みではなく、データという事実に基づいて意思決定する文化が、組織に根付いていきます。

計画なき航海が招く、よくある遭難パターン

逆に、もし計画表という海図を持たずに航海に出たらどうなるでしょうか。残念ながら、その先には予測可能な「遭難」が待っています。

・終わらないプロジェクトと膨らむ予算
ゴールが曖昧なため、いつまでもプロジェクトが終わりません。気づけばスコープがどんどん拡大し、追加の予算と人員が必要になる。これは「計画の失敗」の典型例です。

・「やった感」だけの自己満足な分析
ビジネスへの貢献という視点が欠けているため、担当者はレポート作成や分析自体が目的化してしまいます。「こんな分析もできます」と高機能なレポートを作っても、受け手が理解し、行動に移せなければ価値はありません。私も過去に、自己満足な分析でクライアントを混乱させてしまった反省があります。

・担当者への過度なプレッシャーと疲弊
明確な道筋がないまま「とにかく成果を出せ」と言われるのは、現場にとって大きなストレスです。結果、チームの士気は下がり、優秀な人材が疲弊し、離れていってしまうことさえあります。

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こうした事態を避けるためにも、プロジェクトの大小に関わらず、最初に「計画」という錨(いかり)をしっかりと下ろすことが何よりも重要なのです。

明日から、あなたの航海を始めよう

ここまで、Web解析・データ分析における「プロジェクト計画表」の重要性についてお話ししてきました。この記事を読んで、計画の重要性は理解できたけれど、「いざ自社に当てはめてみると、どこから手をつけていいか分からない」と感じているかもしれません。それは、至極当然のことです。

もしよろしければ、明日からできる「最初の一歩」を試してみませんか?

それは、「あなたのチームが今、最も解決したいビジネス課題は何か?」を一つだけ、明確な言葉で書き出してみることです。そして、その課題が解決された理想の状態を想像してみてください。全ての偉大な航海は、この「目的地」を定めることから始まります。

もちろん、その地図作りは簡単ではないかもしれません。どのルートが最適か、どんな嵐が待ち受けているか、一人で考えるには限界があるでしょう。そんな時、私たちのような経験豊富な水先案内人がお役に立てるかもしれません。

ハワイの風景

サードパーティートラストでは、お客様のビジネスの現在地と目的地を深く理解し、実現可能な航路図(プロジェクト計画表)を一緒に描くお手伝いをしています。もし、あなたのビジネスの航海で、羅針盤の示す方角に迷ったり、海図の読み解きに困ったりした際には、いつでもお気軽にご相談ください。あなたの会社のデータに眠る「物語」を読み解き、ビジネスを成功へと導く伴走者となれれば、これほど嬉しいことはありません。

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