KGI・KPI 設定で迷子になっていませんか?あなたのビジネスを動かす「生きた指標」の見つけ方

「KGIを立ててみたものの、どうも実感が湧かない…」
「設定したKPIが、現場の具体的なアクションに繋がっていない気がする」
「結局、データを見ていても次の一手が分からない」

もしあなたが、ビジネスの成長を本気で願いながらも、KGI・KPIという言葉の前で立ち尽くしているのであれば、この記事はきっとあなたのためのものです。経営者として、あるいは事業責任者として、日々数字と格闘する中で、誰もが一度は抱える根深い悩みではないでしょうか。

こんにちは。株式会社サードパーティートラストのアナリストです。私は20年間、ウェブ解析という領域で、ECからBtoBまで、数多くの事業の立て直しに携わってきました。その経験から断言できることがあります。それは、多くの企業がKGI・KPIを「設定すること」で満足してしまい、最も大切な「ビジネスを動かす力」を失わせてしまっている、という事実です。

この記事では、よくある「」の解説に留まりません。私たちが創業以来、一貫して掲げてきた「データは、人の内心が可視化されたもの」という哲学に基づき、あなたのビジネスを真に加速させるための「生きた指標」の見つけ方と、その具体的な使い方を、私の経験を交えながらお話しします。

そもそも、なぜあなたのKGIは「絵に描いた餅」で終わるのか?

KGI(重要目標 達成指標)とKPI(重要業績評価指標)。まるでビジネスの登山における「山頂」と「道標」のような関係です。しかし、多くの現場で、この山頂と道標がうまく機能していません。なぜでしょうか。

ハワイの風景

それは、KGIを単なる「数値目標」として捉えているからです。「売上120%達成!」という目標は、一見すると明確ですが、それだけでは社員の心は動きません。なぜなら、その数字の先にどんな景色が広がっているのか、どんな未来が待っているのかという「物語」が欠けているからです。

私たちの信条は「数値の改善を目的としない。ビジネスの改善を目的とする」というものです。KGIとは、羅針盤を持たずに大海原へ漕ぎ出すような無謀な航海を避けるための道具です。しかし、その羅針盤が指し示す先が、乗組員にとって魅力的でなければ、誰も必死にオールを漕ごうとはしないでしょう。

あなたの設定したKGIは、チーム全員が「そこに行きたい!」と心から思える、魅力的な目的地になっていますか?まずはそこから見つめ直すことが、すべての始まりなのです。

「生きたKGI」を設定するための、実践的3ステップ

では、どうすれば「絵に描いた餅」ではなく、現場を動かす「生きたKGI」を設定できるのでしょうか。小難しいフレームワークの話をする前に、もっと本質的な3つのステップをお伝えします。

ステップ1:ビジネスの「理想の姿」を具体的に描く

まず、SMARTの法則(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限)を意識することは基本ですが、それ以上に大切なのは「なぜその目標を達成したいのか?」というWHYを突き詰めることです。

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例えば「新規顧客を20%増やす」という目標。なぜ増やしたいのでしょう?「市場シェアを拡大し、業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立するため」かもしれませんし、「安定した収益基盤を作り、社員にもっと良い環境を提供するため」かもしれません。この「WHY」こそが、KGIに魂を吹き込む物語になります。

ステップ2:現状をデータで「正しく」把握する

目的地が決まったら、次は現在地と、そこに至るまでのボトルネックを特定します。ここでデータ分析が登場しますが、注意が必要です。かつて私は、データの蓄積が不十分な段階でクライアントを急かす営業的プレッシャーに負け、不正確な分析から提案をしてしまった苦い経験があります。結果は、翌月には全く違う傾向が見え、信頼を大きく損なうことに。データアナリストは、正しい判断のために「待つ勇気」も持たなければならないと痛感した出来事でした。

まずは、信頼できるデータに基づき、「顧客はどこでつまずいているのか?」「最も利益を生んでいるのはどの経路か?」といったビジネスの急所を冷静に見極めましょう。

ステップ3:KGIとKPIを「物語」で繋ぐ

KGIという山頂と、現在地が分かったら、そこにたどり着くための道標(KPI)を立てます。ここで有効なのが「KPIツリー」です。KGIを頂点に置き、「なぜなら(Why)」を繰り返して分解していくことで、日々の行動レベルまで指標を落とし込むことができます。

例えばKGIが「売上1億円」なら、それは「客数 × 客単価」に分解できます。「客数」は「新規顧客+既存顧客」、「新規顧客」は「アクセス数 × CVR」…というように。こうして可視化することで、自分の仕事が、会社の大きな目標のどこに繋がっているのかを誰もが理解できるようになります。

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【業種別】kgi 設定例から学ぶ「プロの着眼点」

ここからは、より具体的な「kgi 設定例」を、私なら「どこに注目するか」という視点を交えて解説します。ただの指標の羅列ではなく、その裏にあるビジネスの意図を読み解いていきましょう。

ECサイト:売上高の「その先」にある利益を見る

多くのECサイトがKGIに「売上高」を掲げます。間違いではありませんが、私は「LTV(顧客生涯価値)」や「利益率」にまで踏み込んで見るべきだと考えます。なぜなら、広告費をかけて売上を伸ばしても、利益が残らなければ事業は続かないからです。

KPIには、CVR(成約率)や客単価はもちろん、「リピート購入率」や「購入頻度」を加えます。リピーターの育成こそが、広告費への依存を減らし、安定した利益を生むからです。かつてあるメディアサイトで、派手なバナー改善に行き詰まっていたクライアントに、記事文脈に合わせた地味な「テキストリンク」への変更を提案したところ、遷移率が15倍に跳ね上がったことがあります。見栄えより、ユーザーの心理に寄り添うことが結果に繋がる好例です。

SaaSビジネス:ARR成長の陰に潜む「サイレントキラー」を暴く

SaaSビジネスのKGIが「ARR(年間経常収益)」なのは当然です。そのためのKPIとして「新規MRR」「アップセル/クロスセルMRR」を追うのも王道でしょう。

しかし、私が最も重要視するのは「チャーンレート(解約率)」、特にその内訳です。解約の裏には、必ず「製品への不満」「サポートへの失望」「価値を感じられなかった」といった顧客の“内心”が隠されています。行動データと、サイト内アンケートなどで得た定性データを掛け合わせ、「どの機能を使っていない顧客が解約しやすいか」「どんな不満を持つ顧客が離れるか」を突き止めること。これこそが、ARR成長の土台を固める最も重要な仕事です。

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メディアサイト:PV数という「幻想」から脱却する

メディアサイトでは「PV数」や「UU数」がKGIになりがちです。しかし、広告収益モデルでない限り、PVはあくまで中間指標に過ぎません。

私が提案するのは、ビジネスゴールに直結する「エンゲージメント」をKGIに据えることです。例えば「資料請求数」「メルマガ登録率」「特定記事からのサービスサイトへの遷移率」などです。そのためのKPIとして「記事読了率」「平均滞在時間」「回遊率」などを設定します。ユーザーがただ記事を消費するだけでなく、次の行動を起こしてくれたか。その「深さ」を測る視点が、メディアの価値を本当の意味で高めます。

KGI設定で陥りがちな「3つの罠」と私の失敗談

どんなに素晴らしいKGI・KPIを設定しても、運用段階でつまずくケースは後を絶ちません。ここでは、私自身が過去に犯した過ちから得た、3つの教訓をお話しします。

罠1:実行不可能な「正論」を振りかざす
あるクライアントで、コンバージョンフォームに明らかな課題がありました。しかし、その管轄は別の部署。組織的な事情を無視して「理想的にはこうすべきです」と正論をぶつけ続けた結果、何も動かせずに時間だけが過ぎました。アナリストは、顧客の現実を深く理解した上で、実現可能なロードマップを描くバランス感覚が不可欠です。

罠2:誰もついてこられない「自己満足レポート」を作る
画期的な分析手法を開発し、意気揚々とクライアントに提出したものの、担当者以外にはその価値が全く伝わらず、活用されなかったことがあります。データは、受け手が理解し、行動に移せて初めて価値が生まれます。相手のリテラシーを見極め、「伝わるデータ」を設計する視点を忘れてはいけません。

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罠3:現場が無視する「お飾りのKGI」を容認する
短期的な関係性を優先し、クライアントが抵抗感を示す根本的な課題への指摘を避けてしまった結果、1年経っても本質的な改善はなされず、大きな機会損失を生んだこともあります。言うべきことは、たとえ嫌われても言い続ける。それがプロフェッショナルとしての誠意だと、今では信じています。

まとめ:KGIは「物語の始まり」。あなたのビジネスを動かす羅針盤に

ここまで、KGI・KPI設定について、私の経験と考えをお話ししてきました。結局のところ、KGIとは単なる管理指標ではありません。それは、あなたの会社がどこへ向かうのかを示す「物語のプロット」であり、社員全員の力を結集させるための「羅針盤」なのです。

データはその羅針盤を正しく動かすための燃料です。そして、数字の裏側にあるユーザーの喜び、怒り、迷いといった感情を読み解き、次の一手を指し示すことこそが、私たちデータアナリストの使命だと考えています。

この記事が、あなたの会社のKGI・KPIを見直し、ビジネスを新たなステージへと進めるための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

明日からできる、最初の一歩

さて、何から始めればよいでしょうか?
まずは、今あなたの会社が掲げているKGIを、もう一度見つめ直してみてください。そして、自問自答してみるのです。

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「この目標は、現場で働くメンバーの、誰の、どんな日々の行動を変えるためのものだろうか?

もし、この問いに即答できないのであれば、それが改善のスタートラインです。一人で答えが出ない、客観的な視点が欲しいと感じたら、ぜひ一度、私たちのような外部の専門家にご相談ください。あなたのビジネスの航海図を、一緒に描かせていただければ幸いです。

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