GA4イベント作成完全ガイド:ビジネスを動かす「問い」の見つけ方
株式会社サードパーティートラストのアナリストです。20年にわたり、ウェブ解析の現場で数々の事業課題と向き合ってきました。
「GA4の画面は開いてみたものの、専門用語ばかりでどこから手をつければ…」「イベント設定が重要とは聞くけれど、具体的に自社のビジネスにどう役立つのかイメージが湧かない」。そんなお悩みを抱え、データ活用の第一歩を踏み出せずにいる方は、決して少なくありません。
ご安心ください。この記事は、単なるGA4の操作マニュアルではありません。私が20年間、現場で一貫して追求してきた「データから人の心を読み解き、ビジネスを動かす」という哲学に基づき、GA4のイベント作成をどう捉え、どう実践すれば成果に繋がるのか、その本質をお伝えします。
この記事を読み終える頃には、あなたはGA4イベント作成という「羅針盤」を手にし、データという大海原を自信を持って航海できるようになっているはずです。さあ、一緒にビジネスの未来を拓く旅に出ましょう。
なぜGA4で「イベント作成」が不可欠なのか?
そもそも、なぜ私たちはGA4で「イベント」を作成する必要があるのでしょうか。それは、私たちが創業以来掲げてきた「データは、人の内心が可視化されたものである」という信条に深く関わっています。

ウェブサイト上のPV数やセッション数だけを見ていても、ユーザーが「なぜ」そのページを訪れ、「何に」心を動かされ、「次に」何をしようとしているのか、そのストーリーは見えてきません。GA4のイベント作成とは、こうしたユーザー一人ひとりの行動と感情の機微を、意味のある「出来事(イベント)」として記録する行為なのです。
例えば、「資料請求ボタンのクリック」というイベントを計測することで、「この情報に強い関心を示した人」を特定できます。「特定の動画を75%まで視聴した」というイベントなら、「製品の利点に深く共感してくれた人」の姿が浮かび上がります。
これを怠ることは、宝の地図を読まずに航海に出るようなもの。かつて、あるクライアントは「コンバージョン」の定義が曖昧なまま広告を運用し、多額の予算を投じながらも成果に繋がらないという悩みを抱えていました。私たちはまず、ビジネスゴールから逆算して計測すべきイベントを再設計しました。その結果、本当に価値あるユーザー行動が可視化され、広告の費用対効果が劇的に改善したのです。
イベント作成は、単なる技術的な設定ではありません。あなたのビジネスにとって「何が重要か」を定義し、ユーザーとの対話の記録を残す、極めて戦略的な第一歩なのです。
航海の準備:イベント作成を始める前に
さて、GA4イベント作成という航海に出る前に、最低限必要な準備を整えましょう。美味しい料理を作るには、まずキッチンと新鮮な食材を揃えることから始まるのと同じです。

GA4のアカウントとプロパティの開設は済んでいる、という前提で進めます。まず、強く推奨したいのがGoogleタグマネージャー(GTM)の導入です。GTMは、ウェブサイトのコードを直接触ることなく、計測タグを柔軟に管理できる、いわば「計測の司令塔」です。これがあるだけで、イベント計測の自由度とスピードは飛躍的に向上します。
GTM導入前はイベント一つ追加するにも開発部門への依頼が必要で、数週間待たされることも珍しくありませんでした。しかしGTM導入後は、マーケティング担当者自身が、ものの数分で新しいイベントを試せるようになります。この機動力の差が、ビジネスの勝敗を分けることもあるのです。
そして、道具以上に重要なのが「航海図」、つまりイベント計測の計画です。ここで多くの担当者が陥りがちなのが、とにかく計測できるものを闇雲に設定してしまうことです。これでは、ただノイズの多いデータを増やすだけで、分析の妨げにさえなります。
そうではなく、まず「このサイトのゴールは何か?(KGI)」、そして「そのゴール達成のために、ユーザーにどんな行動を取ってほしいか?(KPI)」を明確にしてください。「購入完了」「問い合わせ完了」「会員登録」など、ビジネスの心臓部となる行動から優先的に計測対象と定めていくのです。この計画こそが、あなたのデータ分析の精度を決定づけます。
イベント作成の羅針盤:具体的な方法と「問い」の立て方
準備が整ったら、いよいよイベント作成の実践です。GA4には、あらかじめ用意された「自動収集イベント」「測定機能の強化イベント」「推奨イベント」と、自分で定義する「カスタムイベント」の4種類があります。

特にビジネスの成果を左右するのは、自社のウェブサイト独自の行動を捉える「カスタムイベント」です。そして、このカスタムイベントの設定こそが、多くの方にとって最初の壁となるでしょう。
しかし、難しく考える必要はありません。カスタムイベント作成とは、パズルを組み立てるように、一つひとつのピースをはめていく作業です。GTMを使えば、例えば「特定のボタンがクリックされた時」「特定のフォームが送信された時」といったユーザー 行動を「トリガー(引き金)」として設定し、それをGA4にイベントとして送信できます。
ここで私がいつもクライアントにお伝えするのは、「完璧な設計を目指すより、まずは一つの『問い』から始めましょう」ということです。例えば、「この記事を読んだ人は、本当に次のサービス紹介ページに興味を持ってくれているのだろうか?」という問い。この問いに答えるためには、「記事下部のサービス紹介バナーのクリック」をイベントとして計測すればよいのです。
かつて、あるメディアサイトでバナーのデザインをいくら変更しても遷移率が上がらない、という課題がありました。私たちは派手な改善案にこだわらず、「記事の文脈に合わせた自然なテキストリンク」への変更を提案し、そのクリックをイベントとして計測しました。結果、遷移率は15倍に向上。この「問い」と「検証」のサイクルこそが、改善の原動力です。
イベント名やパラメータ(イベントに付随する情報)の命名規則を整えることも重要です。これは、後で分析という料理をする際の「レシピ」になります。誰が見ても理解できるよう、一貫性のあるルールを設けましょう。

GTMを使ったイベント作成の基本ステップ
- トリガーの設定: 「いつ」イベントを発生させるかを定義します。「クリック」「ページの表示」「フォーム送信」など、ユーザーの行動が引き金になります。
- タグの設定: 「何を」GA4に送るかを定義します。ここでGA4イベントタグを選び、分かりやすいイベント名(例:`click_download_button`)を設定します。
- 変数の設定: イベントに「どんな情報」を添えるかを定義します。クリックされたテキストやページのURLなど、分析の解像度を上げるための重要な情報です。
- プレビューとデバッグ: 設定が意図通りに機能するか、公開前に必ず確認します。GTMのプレビューモードは、このための強力な味方です。
- 公開: 全てが問題なければ、変更を公開し、GA4でデータが計測され始めるのを待ちます。
最初は、ビジネスに最もインパクトの大きい、たった一つのイベントからで構いません。そこから得られた学びが、次の「問い」を生み、あなたのサイトを継続的に成長させていくのです。
嵐を乗り越える:イベント計測でよくある問題と「待つ勇気」
航海に嵐がつきものであるように、イベント作成にもトラブルはつきものです。「設定したはずのイベントが反映されない」「データが正しく表示されない」といった問題に直面し、頭を抱えた経験は私にもあります。
イベントが反映されない場合、まずチェックすべきはGTMのプレビューモードです。ここでイベントが発火していなければ、トリガーやタグの設定に誤りがある可能性が高いです。もしGTMで発火しているのにGA4にデータが来ない場合は、GA4側の設定(測定IDなど)や権限設定を見直してみましょう。
ここで一つ、私の苦い失敗談をお話しさせてください。かつて、新しい設定を導入したクライアントからデータ活用を急かされ、焦りからデータ蓄積が不十分なまま分析レポートを提出してしまったことがあります。しかし翌月、十分なデータが蓄積されると、全く異なる傾向が見えてきました。前月のデータは、短期的な要因による「異常値」に過ぎなかったのです。この一件で、私はクライアントの信頼を大きく損ないました。
この経験から学んだのは、データアナリストは「待つ勇気」を持たなければならないということです。GA4のデータがレポートに完全に反映されるまでには、最大で48時間程度かかることがあります。不確かなデータで語るくらいなら、沈黙を選ぶ。その誠実さこそが、最終的に正しい判断と信頼に繋がると、私は信じています。

より深くへ:GA4イベントをビジネスの武器に変える
基本的なイベント作成に慣れたら、さらに一歩踏み込んで、データをビジネスの武器へと昇華させていきましょう。
私が得意とするのは、一見複雑なユーザー行動の中から、本質的な要素だけを抜き出し、誰もが理解できるシンプルなモデルに再構築することです。例えば、サイト内の重要なコンテンツ群を「マイルストーン」として定義し、ユーザーがどの順番でマイルストーンを通過した時にコンバージョン率が高いのか、という「黄金ルート」を分析します。このインサイトは、サイト改善だけでなく、広告のターゲティング精度向上にも直結します。
また、GA4の行動データだけでは、ユーザーが「なぜ」そうしたのか、という内心までは分かりません。そこで私たちは、サイト内の行動履歴に応じてアンケートを出し分ける独自のツールを開発しました。これにより、「特定の高額商品ページを3回以上訪れたが購入していないユーザー」にだけ、「ご購入を迷われている点は何ですか?」というアンケートを表示できます。
このようにして得られた「定性データ」と、GA4の「定量データ」を掛け合わせることで、ユーザーの行動の裏にある「なぜ?」が解明され、提案の精度は飛躍的に向上します。イベント作成は、こうした高度な分析への入り口なのです。
組織で活かす:データという共通言語を育むための権限管理
最後に、少し組織の話をさせてください。どれだけ優れたイベント設計をしても、そのデータが組織の中で正しく活用されなければ意味がありません。そのために重要なのが「権限管理」です。

イベント作成には「編集者」以上の権限が必要ですが、誰にでもその権限を与えてしまうと、誤った設定によるデータ汚染のリスクが高まります。かといって、一部の担当者だけがデータを独占していては、組織全体のデータリテラシーは育ちません。
ここで重要なのは、「誰が、どんな目的でデータを見るのか」という組織体制に合わせて権限を設計することです。例えば、GTMの「ワークスペース」機能を使えば、テスト環境で安全にイベント設定の検証を行い、承認フローを経てから本番環境に公開する、といった統制の取れた運用が可能になります。
データは、正しく管理されて初めて、部署の壁を越える「共通言語」となります。私たちは、単に設定方法をお伝えするだけでなく、あなたの会社の組織文化やメンバーのスキルレベルまで考慮した、現実的で持続可能なデータ活用体制の構築までご支援します。
まとめ:明日からできる、最初の一歩
ここまで、GA4イベント作成の本質と、それをビジネスの成長に繋げるための考え方についてお話ししてきました。イベント作成は、ユーザーの心の声に耳を澄まし、あなたのビジネスが進むべき道を照らし出すための、強力な羅針盤です。
しかし、情報が多すぎて、何から手をつければいいか分からなくなってしまったかもしれませんね。

そこで、あなたに「明日からできる最初の一歩」をご提案します。まず、ペンと紙を用意してください。そして、「自社のウェブサイトで、ユーザーに最終的に達成してほしい最も重要なゴールは何か?」を一つだけ、書き出してみてください。それが「購入」でも「問い合わせ」でも「会員登録」でも構いません。
それが、あなたの会社にとって最も価値のある「コンバージョンイベント」です。まずはそのたった一つのゴールを正確に計測することから、すべては始まります。
もし、そのゴールの設定方法が分からない、自社の場合は何をゴールにすべきか迷う、あるいは、もっと踏み込んだデータ活用でビジネスを加速させたい。そうお考えでしたら、ぜひ一度、私たちにお声がけください。
あなたのビジネスの現状と課題をじっくりお伺いし、20年の経験で培った知見を総動員して、最適な航路をご提案します。あなたの挑戦を、私たちが全力でサポートさせていただきます。