“数字”に振り回されるのは、もうやめにしませんか? データ活用戦略でビジネスの壁を打ち破る思考法
「GA4のレポートを毎日眺めてはいるけれど、結局『で、次は何をすればいいんだっけ?』と、ため息をついていませんか。」
「データ活用が重要だと頭では分かっている。でも、そのデータが売上に繋がっている実感がまるでない…」
もし、あなたが今、そんな壁に突き当たっているのなら、どうか安心してください。それは決して、あなたやあなたのチームの能力が低いからではありません。20年以上、ウェブ解析の世界で数々の企業と向き合ってきた私から見ても、それは極めて「よくある」悩みだからです。
こんにちは、株式会社サードパーティートラストのアナリストです。私たちは創業以来15年間、一貫して「データは、人の内心が可視化されたものである」という信念を掲げ、あらゆる業界のWebサイト課題を解決してきました。今日は、その経験のすべてを注ぎ込み、データという強力な武器を真に使いこなすための「思考法」について、あなたに直接お話ししたいと思います。
この記事を読み終える頃には、あなたは数字の羅列に振り回される現状から抜け出し、ビジネスを動かすための確かな羅針盤を手にしているはずです。

そもそも「データ活用戦略」とは何か? なぜ多くの企業が失敗するのか
「データ活用戦略」と聞くと、何か壮大で複雑なものを想像されるかもしれません。しかし、本質は驚くほどシンプルです。それは、データという「お客様の声なき声」に耳を傾け、ビジネスをより良い方向へ導くための「物語」を描くことに他なりません。
多くの企業が「データを分析している」と言いますが、その実態は、GA4の数値を眺めてレポートを作成するだけで終わってしまっています。それは登山に例えるなら、方位磁石をじっと見つめているだけで、どの山に登るのか、どのルートで行くのかを決めていない状態と同じです。それでは、一歩も前に進むことはできません。
なぜ、このような状況に陥ってしまうのでしょうか。私が現場で見てきた中で、特に多い失敗の原因は3つあります。
- 目的の不在:「何を改善したいのか」が曖昧なまま、ただデータを集めてしまう。
- 手段の目的化:高機能なツールを導入しただけで満足し、それをどう使うかが議論されない。
- レポートの形骸化:誰も行動に移さない、ただ「きれいなレポート」を作ることが仕事になってしまう。
かつて私も、画期的な分析手法を開発したことに満足し、お客様のデータリテラシーを十分に考慮しないレポートを提出してしまった苦い経験があります。どんなに高度な分析も、受け手が理解し、行動に移せなければ、それは自己満足でしかないのです。データ活用の目的は、数値を改善することではありません。ビジネスそのものを改善すること、これ以外にはあり得ないのです。
成功へのロードマップ:ビジネスを動かすデータ活用 4つのステップ
では、どうすればデータという羅針盤を正しく使いこなし、ビジネスという大海原を渡っていけるのでしょうか。それは、複雑な方程式を解くことではありません。むしろ、思考をシンプルにして、正しい問いを立てることから始まります。

Step 1:目的地の設定(KGI/KPI 設計)― 私たちは、どの山頂を目指すのか?
まず最初に決めるべきは、「どこへ向かいたいのか」という最終目的地(KGI)です。売上向上なのか、リード獲得数の増加なのか、あるいは顧客満足度の向上なのか。この山頂が定まらなければ、どのデータを見るべきかも決まりません。
そして、山頂が決まったら、そこへ至るための登山ルート、つまり中間指標(KPI)を設計します。大切なのは、誰もが理解でき、日々の行動に繋がるシンプルな指標を選ぶことです。難解な指標は、結局誰にも見られなくなり、やがて忘れ去られてしまいます。
Step 2:現在地の把握(データ収集・分析)― 森の全体像を掴む
闇雲にデータを集めるのは、地図も持たずに森へ入るようなものです。目的達成のために「本当に必要なデータは何か」を見極め、収集する情報を絞り込みましょう。
ここで私たちの強みである「マイルストーン分析」という考え方が活きてきます。これは、サイト内の無数のページ遷移の中から、コンバージョンに至る重要な経由地(マイルストーン)だけを追跡する手法です。複雑なユーザー 行動の中から、ビジネスの成否を分ける「黄金ルート」を見つけ出すことで、見るべきデータを劇的に単純化できるのです。
Step 3:仮説という名のルート設計(施策立案)― 次の一歩を決める
データ分析は、犯人探しのためのものではありません。データから見えてきた「なぜ?」というヒントを元に、「こうすれば、もっと良くなるのでは?」という未来に向けた仮説を立てるためのものです。

ここで陥りがちなのが、派手でコストのかかる施策ばかりを考えてしまうこと。しかし、私は「簡単な施策ほど正義」だと信じています。以前、あるメディアサイトで、どんなに凝ったバナーを作っても改善しなかった送客率が、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」に変えただけで15倍に跳ね上がったことがありました。ユーザーにとって、見栄えよりも「情報の分かりやすさ」が重要であることの何よりの証拠です。
Step 4:一歩ずつ、着実に(施策実行と検証)― 迷いを断ち切るABテスト
仮説が生まれたら、検証あるのみです。特にABテストは、私たちの進むべき道を照らす強力な光となります。ただし、ここにもコツがあります。それは「大胆かつシンプルに」行うこと。
比較する要素は一つに絞り、その差は誰が見ても分かるくらい大胆に設ける。中途半端なテストは「よく分からなかった」という最悪の結果を招き、時間とリソースを無駄にするだけです。ABテストの目的は、勝ち負けをはっきりさせ、次に進むべき道を明確にすること。迷いを断ち切るための検証こそが、継続的な改善サイクルを生み出すのです。
GA4は「翻訳機」である ― ビジネスの「知りたい」をデータに変換する技術
さて、ここまでの話を踏まえると、GA4というツールがどのように見えてくるでしょうか。
私たちはGA4を、単なるアクセス解析ツールではなく、ビジネス課題という「人間の言葉」を、データという「デジタルの言葉」に翻訳してくれる、非常に優秀な『翻訳機』だと捉えています。

例えば、「どんな情報を、どの順番で見ているお客様が、最も商品を買ってくれやすいのか?」というビジネス上の問いがあるとします。この「問い」を、GA4のカスタムイベントや探索レポート機能を駆使して設定することで、データとして答えを導き出すことができるのです。
多くの担当者がつまずくカスタムイベントの設定も、「翻訳の精度を上げるためのチューニング作業」と考えれば、ぐっと取り組みやすくなるはずです。重要なのは、設定する前に「このイベントで、自分たちは何を知りたいんだっけ?」と、必ずビジネスの目的に立ち返ることです。この地道な作業こそが、データ活用の成否を分けるのです。
データに背を向けた企業の行く末 ― 向き合うことで得られる真のメリット
もし、このデータ活用戦略を導入しなかったら、どうなるでしょうか。それは、羅針盤も海図も持たずに、勘と経験だけを頼りに荒波に乗り出すようなものです。競合他社がデータに基づいた的確な舵取りで前進する中、あなたの船は知らず知らずのうちに航路を外れ、やがて座礁してしまうかもしれません。
以前、あるクライアントで、サイトの根本的な課題がコンバージョンフォームにあることは誰の目にも明らかでした。しかし、組織の壁を前に、私はその提案を一度引っ込めてしまいました。その結果、1年経っても本質的な改善はなされず、機会損失が続いたのです。データが示す「避けては通れない課題」から目を背けることは、ビジネスの成長を自ら止めてしまう行為に他なりません。
逆に、データと真摯に向き合うことで得られるメリットは計り知れません。それは「売上20%向上」といった結果の数字だけではありません。

- 顧客の行動データから、彼らが本当に求めているものを理解し、先回りした提案ができるようになる(顧客満足度の向上)
- 効果のない広告や施策をデータに基づいて判断し、本当に価値ある場所へリソースを集中できる(コスト削減とROIの最大化)
- 客観的なデータが共通言語となり、部署間の壁を越えた建設的な議論が生まれる(迅速な意思決定と組織力の強化)
データ活用とは、顧客との対話を深め、ビジネスの血の巡りを良くする、極めて人間的な活動なのです。
次のステップ:明日からできる、データ活用のための「最初の一歩」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。データ活用の世界は奥深く、一朝一夕にすべてをマスターできるものではありません。しかし、今日から始められる、確かな一歩があります。
この記事を閉じたら、ぜひ試してみてください。
まず、「もし、自社のWebサイトをたった一つだけ改善できるとしたら、どこを直すか?」を、紙に書き出してみてください。そして、その隣に「なぜ、そこが重要だと考えたのか?」という理由を、あなた自身の言葉で説明してみてください。
それが、あなたの会社のデータ活用戦略の、記念すべき第一歩です。その問いこそが、見るべきデータを定め、進むべき道を照らす、すべての始まりとなるからです。

もし、その問いの答えに詰まったり、あなたの考えを客観的な視点で聞いてほしくなったりした時は、いつでも私たちにご相談ください。私たちは「答え」を教えるコンサルタントではありません。データと対話し、あなた自身の力でビジネスを動かしていくための「伴走者」として、20年分の知見と経験をもって、誠心誠意サポートさせていただきます。