SaaS 比較サイトに頼る前に。20年のプロが教える「失敗しない」ツール選びの本質

株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。ウェブ解析の世界に身を置いて20年、様々な企業の「Webサイトの課題」と向き合ってきました。

さて、「saas 比較 サイト おすすめ」…このキーワードで情報を探しているあなたの姿が、目に浮かぶようです。

「業務効率を上げたいが、ツールが多すぎて選べない」
「コストをかけて導入したのに、現場で全く使われなかったらどうしよう」
「そもそも、自社に本当に必要な機能って何なのだろう…」

そんな期待と不安が入り混じった気持ちではないでしょうか。そのお気持ち、痛いほどよく分かります。なぜなら、私自身がクライアントのSaaS選びに同席し、同じような悩みに何度も直面してきたからです。

しかし、ご安心ください。この記事は、単におすすめの比較サイトをリストアップするものではありません。20年間の経験で確信した、SaaS選びで本当に重要な「思考のフレームワーク」そのものをお伝えします。表面的な情報に惑わされず、あなたのビジネスを真に加速させる一社を見つけ出すための羅針盤として、最後までお付き合いいただければ幸いです。

ハワイの風景

ツール導入の熱狂と、その後の現実

SaaS(Software as a Service)が普及し、かつては大企業しか持てなかったような高機能なツールを、誰もが手軽に利用できる時代になりました。これは素晴らしいことです。しかし、その手軽さゆえに、多くの企業が「SaaS選びの罠」にはまっている現実も、私は目の当たりにしてきました。

あるクライアントは、営業力の強化を目指して、業界で最も高機能とされるCRM(顧客関係管理ツール)を導入しました。しかし、半年後、その利用率は見るも無惨な状態に。現場の営業担当者からは「入力項目が多すぎて、営業活動の時間が削られる」という悲鳴が上がっていました。

結局、その高価なCRMはほとんど使われることなく、まさに「宝の持ち腐れ」となってしまったのです。

なぜ、こんなことが起きてしまうのでしょうか。それは、多くのケースで「ツールの機能」ばかりに目が行き、そのツールが解決すべき「自社の課題の本質」を見失っているからです。私たちが創業以来掲げている「データは、人の内心が可視化されたものである」という信条は、ここでも当てはまります。SaaS選びの失敗は、自社の課題という「組織の内心」を、正しく可視化できていないことから始まるのです。

SaaS選びの羅針盤。まず「北」を決めることから始めよう

SaaS比較サイトを眺めるのは、少し待ってください。素晴らしい登山靴が並ぶ店に入っても、どの山に登るか決まっていなければ、最適な一足は選べませんよね。SaaS選びも全く同じです。

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まずやるべきことは、SaaS導入という「手段」の前に、その「目的」を定めること。つまり、あなたのビジネスという船が向かうべき「北」、すなわちゴールを明確にすることです。

難しく考える必要はありません。まずは、あなたのチームで、次の3つの問いについて話し合ってみてください。

1. このツールで「何を」解決したいのか?
(例:請求書作成の手間を月20時間削減したい、見込み客へのアプローチ漏れをゼロにしたい)

2. それは「誰の」課題なのか?
(例:経理担当者の残業、営業担当者の機会損失)

3. 成功の定義は「どんな状態」か?
(例:月末の経理業務が半日で終わる、全営業担当者が毎月10件の新規アポイントを獲得できている)

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このように目的を言語化することで、初めてSaaSに求める「必須の機能」と「あれば嬉しい機能」を切り分けられるようになります。この「課題の解像度」こそが、SaaS選びの成否を分ける最初の分岐点です。

SaaS比較サイトは「地図」である。3つのタイプの地図を使いこなす

さて、登るべき山(目的)が決まったら、いよいよ地図(SaaS比較サイト)の出番です。しかし、地図にも様々な種類があるように、比較サイトにもそれぞれ得意なこと、不得意なことがあります。やみくもに見るのではなく、それぞれの特性を理解し、目的に応じて使い分けることが肝心です。

ここでは、比較サイトを大きく3つのタイプに分けて、その賢い使い方をご紹介します。

タイプ1:百貨店型(網羅的サイト)
あらゆるジャンルのSaaSを幅広く掲載している、総合的な比較サイトです。まずはどんな選択肢があるのか市場の全体像を掴みたい、という初期段階で非常に役立ちます。ただし、情報量が多いため、目的が曖昧なまま訪れると情報の洪水に溺れてしまう可能性があるので注意が必要です。

タイプ2:専門店型(特化型サイト)
特定の業界(例:建設業向け、医療向け)や特定の業務(例:MAツール専門、会計ソフト専門)に特化したサイトです。その分野における深い情報や、専門的な視点での比較が得られるのが強みです。自社の業界や課題が明確な場合には、非常に頼りになる存在です。

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タイプ3:口コミ広場型(レビュー重視サイト)
実際の利用者のレビューや評価を中心にコンテンツが構成されているサイトです。機能一覧だけでは分からない「実際の使い勝手」や「サポートの対応」といった、生々しい情報を得られるのが最大のメリットです。ただし、個人の感想は玉石混交。自社の状況と照らし合わせ、客観的に読み解く視点が求められます。

地図の情報を鵜呑みにしない。プロが実践する「3つの深読み」

地図が手に入っても、それを鵜呑みにしてはいけません。情報が古かったり、そもそも地図自体にクセがあったりもします。比較サイトの情報を評価する際には、私たちプロは、必ず以下の3つの視点で「深読み」を行っています。

1. 情報の「鮮度」と「中立性」は保たれているか?
SaaSの料金や機能は、驚くほどの速さで変化します。その情報がいつ更新されたものか、必ず確認しましょう。また、サイトの運営元はどこか、広告収益で成り立っている「PR記事」ではないか、という情報の背景を読むことも、客観的な判断には不可欠です。

2. 機能の裏にある「運用の重さ」を想像できているか?
「多機能」という言葉は魅力的ですが、それは同時に「覚えることが多い」「設定が複雑」「入力が面倒」といった「運用の重さ」と表裏一体です。レビューを読む際は、「この機能、うちのチームは毎日無理なく使い続けられるだろうか?」という現場目線でのシミュレーションを忘れないでください。

3. 「連携性」という未来への投資を評価できているか?
SaaS選びは、点ではなく線で捉えるべきです。今使っている会計ソフト、将来導入するかもしれないMAツール…。それらとスムーズにデータ連携できるかは、将来の業務効率を大きく左右します。目先の機能だけでなく、あなたの会社のIT環境全体の中で、そのSaaSがどう機能するかという視点を持つことが重要です。

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SaaSは「ゴール」ではなく「エンジン」。ビジネスを加速させるデータ連携の視点

そして、最もお伝えしたいことがあります。それは、最適なSaaSを導入することは、ゴールではなく、ようやくスタートラインに立ったに過ぎない、ということです。

SaaSは、それ自体が魔法の杖なのではありません。業務を効率化し、データを生み出す「強力なエンジン」です。しかし、そのエンジンをどう動かし、どの方向に進むのか、そのハンドルを握るのはあなた自身です。

私たちの哲学は「数値の改善を目的としない。ビジネスの改善を目的とする」です。SaaSを導入して「業務時間が〇時間削減された」で終わらせては、その価値の半分しか享受できていません。大切なのは、そのSaaSから得られるデータを、あなたの会社の羅針盤であるWeb解析データ(GA4など)や販売データと繋ぎ合わせ、「なぜビジネスが改善したのか」というストーリーを読み解くことです。

かつて、行動データだけではユーザーの「なぜ?」が分からず、提案が頭打ちになった経験から、私たちはサイト内アンケートツールを自社開発しました。これにより、例えば「資料請求したユーザーは、実は来店経験者だった」といった定性データを、GA4の定量データと掛け合わせ、広告戦略の精度を劇的に向上させることができました。

SaaSは、こうした分析の「材料」を供給してくれる源泉なのです。導入したSaaSのデータを孤立させず、ビジネス全体のデータと統合して初めて、その真価が発揮されます。

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まとめ:明日からできる、SaaS選びの最初の一歩

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。SaaS選びという、複雑で骨の折れる旅路の、確かな地図とコンパスを手に入れていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。

「やるべきことが多くて、何から手をつければ…」と感じたかもしれませんね。でも、大丈夫です。壮大な計画は必要ありません。

明日からできる、最初の一歩。

それは、まずあなたのデスクの周りの3人に、「仕事で一番、時間がかかって面倒なことは何ですか?」と聞いてみることです。

最高のSaaS選びのヒントは、高尚な戦略会議室ではなく、現場のリアルな声にこそ眠っているのです。その小さな声を集めることこそが、失敗しないSaaS選びの、最も確実で、最も重要なスタートとなります。

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もし、そうして集めた現場の声をどう整理し、どのSaaSと比較し、どのデータと連携させればビジネスの改善に繋がるのか、その具体的な道筋を描く上でお困りでしたら、いつでも私たちにご相談ください。

20年間、データの中から人の心を読み解いてきた私たちだからこそ、お手伝いできることがあるはずです。あなたのビジネスが、最高のエンジンを手に入れて力強く前進していく姿を、すぐ側で伴走させていただければ幸いです。

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