SaaS選びに終止符を。ツールの比較で疲弊しないための「本質的な観点」とは

「SaaSって便利そうだけど、種類が多すぎて、結局どれが自社に合うのか分からない…」
「機能や価格を比較するだけで時間が過ぎて、導入プロジェクトが前に進まない…」

もしあなたが今、そんな悩みの渦中にいるのなら、それは至極当然のことです。新しいツールで業務を効率化し、ビジネスを加速させたいという強い想いがあるからこそ、SaaS選びという大きな決断の前で足がすくんでしまう。その気持ち、私には痛いほどよく分かります。

こんにちは。株式会社サードパーティートラストで、ウェブ解析に20年間携わっているアナリストです。これまでECサイトからBtoB、メディアまで、あらゆる業界の「Webサイトの課題」をデータと共に解決してきました。そしてその過程で、数多くの企業のSaaS導入プロジェクトにも伴走してきました。

この記事でお伝えしたいのは、単なる機能や価格の比較リストではありません。私が20年の現場で見てきた、SaaS選びで成功する企業と、失敗する企業を分ける「決定的な違い」についてです。表面的なスペック比較から脱却し、あなたのビジネスを本当に成長させるSaaSを見抜くための、本質的な観点をお話しします。

この記事を読み終える頃には、あなたはSaaS選びという名の霧が晴れた海で、進むべき方向を指し示す羅針盤を手にしているはずです。

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なぜSaaS選びはこんなにも難しいのか? 陥りがちな「機能比較」の罠

多くの企業がSaaS選びでつまずく最大の理由は、実にシンプルです。それは、「機能の多さ」や「価格の安さ」という、目に見えやすい指標だけで判断しようとしてしまうからです。

これは、例えるなら「最高の食材リスト」だけを見て、どんな料理を作るか決めるようなもの。A5ランクの牛肉、採れたての有機野菜…どれも素晴らしい食材ですが、それを使って作りたいのがカレーなのか、すき焼きなのかが決まっていなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

私がこれまで見てきた中でも、特に印象的だった失敗例があります。あるクライアントは、非常に多機能なマーケティングオートメーション(MA)ツールを鳴り物入りで導入しました。しかし、1年後、その機能の8割は全く使われず、現場は複雑な操作に疲弊。結果として、導入前より業務効率が悪化するという、笑えない事態に陥ってしまったのです。

彼らが比較検討で見ていたのは、「何ができるか(機能リスト)」だけでした。しかし、本当に見るべきだったのは、「誰が、どんな課題を解決するために、どう使うのか」という、「人」と「業務」の物語です。

私たちが創業以来、一貫して掲げてきた「データは、人の内心が可視化されたものである」という信条は、SaaS選びにも通じます。機能スペックという数字の羅列の裏にある、現場の社員一人ひとりの「もっとこうだったら楽なのに」という内心の声に耳を傾けること。それこそが、SaaS 比較検討の本当のスタートラインなのです。

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失敗から学ぶ、SaaS比較で本当に押さえるべき3つの大原則

では、具体的にどのような観点でSaaSを比較すれば良いのでしょうか。機能、価格、セキュリティ…個別の項目を挙げることは簡単ですが、それらを貫く「考え方」がなければ、また同じ罠に陥ってしまいます。ここでは、私が数々の失敗から学んだ、SaaS比較で絶対に外してはいけない3つの大原則をお伝えします。

原則1:「何ができるか」より「何を解決したいか」

まず最も重要なのが、導入目的の解像度をとことんまで高めることです。「業務効率化」といった漠然とした目標では不十分です。「営業部の、誰の、どの作業時間を、月に何時間削減したいのか」まで具体化しなくてはなりません。

登山に例えるなら、いきなり高機能な登山靴やザックを物色し始める登山家はいませんよね。まずは「どの山(KGI)に、どのルートで登るのか」という登山計画を立てるはずです。SaaS選びも全く同じ。目指すゴールが明確であって初めて、本当に必要な道具(機能)が見えてくるのです。

ここで一つ、過去の私の失敗談をお話しさせてください。あるクライアントサイトで、データ上、明らかにコンバージョンフォームがボトルネックでした。しかし、その管轄が他部署で、組織的な抵抗を恐れた私は、その根本的な指摘を避けてしまいました。結果、1年間、小手先の改善に終始し、ビジネスは停滞したまま。SaaS導入も、時に部門間の壁にぶつかることがあります。だからこそ、「なぜこのツールが必要なのか」という目的を、関係者全員が同じ言葉で語れるレベルまで具体化しておくことが、何よりも大切なのです。

原則2:「月額料金」という氷山の一角を見抜く

次に、コストの捉え方です。多くの人が月額料金に目を奪われがちですが、それは海に浮かぶ氷山の一角に過ぎません。

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SaaSの真のコストは、TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)で考えなければなりません。月額料金に加え、初期設定費用、データ移行費用、既存システムとの連携開発費、社員へのトレーニング費用、そして導入後に発生するであろう追加のカスタマイズ費用。これら全てを含めて、初めて本当のコストが見えてきます。

私の信条の一つに「簡単な施策ほど正義」というものがあります。これは、最も早く、安く、簡単に実行できて効果が大きい施策こそ価値がある、という考え方です。SaaS選びにおいても、高機能で高価なツールが常に最良とは限りません。むしろ、機能はシンプルでも、自社の課題にジャストフィットし、すぐに全社で使いこなせるツールの方が、結果的にROI(投資対効果)が遥かに高くなるケースを、私は何度も目にしてきました。

原則3:「最高のツール」が「最適なツール」とは限らない

世の中で「最高のSaaS」と評価されているツールが、あなたの会社にとって「最適なSaaS」であるとは限りません。最後の原則は、自社の「組織」との適合性です。

具体的には、以下の3つの視点で評価する必要があります。

  • セキュリティレベルの適合性:自社のセキュリティポリシーと、SaaSが提供するセキュリティレベルは合致していますか?
  • システム連携の適合性:今使っている会計システムや顧客管理システムと、スムーズに連携できますか?
  • 人的リテラシーの適合性:そして最も重要なのがこれです。そのツールを、現場の社員がストレスなく使いこなせるでしょうか?

かつて私は、画期的な分析手法を開発したものの、導入先の担当者以外には難解すぎて、全く社内に浸透しなかったという苦い経験があります。どんなに優れた道具も、使い手がいて初めて価値が生まれる。SaaSも同様で、組織の成熟度やITリテラシーを無視した「正論」だけのツール選定は、必ず失敗します。

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実践!あなたの会社に最適なSaaSを見つけるための具体的なステップ

ここまでお話しした3つの原則を胸に、いよいよ実践です。闇雲に情報を集める前に、以下のステップで進めてみてください。きっと、これまでとは全く違う景色が見えてくるはずです。

Step 1:課題の言語化と目的の共有
まずは関係者(実際にツールを使う人、予算を承認する人)を集め、「私たちがSaaSで解決したい課題は何か?」を議論し、一枚の紙に書き出しましょう。「誰の」「どんな痛み」を「どう解決したいのか」。この共通認識が、今後の全ての判断の拠り所となります。

Step 2:仮説を持った情報収集
比較サイトやレビューを見る際も、ただ眺めるのではありません。「Step 1で定義した課題を解決できるのは、AとBのどちらだろう?」という仮説を持って情報を探します。導入事例を読む際も、「この成功企業と自社との違いは何か?」を考えながら読むことで、単なる情報が、自社にとっての「生きた知見」に変わります。

Step 3:「検証」を目的とした無料トライアル
無料トライアルは、「お試し」期間ではありません。「仮説を検証する」ための貴重な実験の場です。例えば、「このSaaSを導入すれば、請求書作成の時間が半分になるはずだ」という仮説を立て、実際にトライアル期間中に時間を計測してみる。このひと手間が、導入後の「こんなはずじゃなかった」を防ぎます。

Step 4:見えざる「サポート体制」の評価
ツールが優れていることと、サポートが良いことは別問題です。問題が発生したときに、迅速かつ的確なサポートを受けられるか。これは、ビジネスの継続性に関わる重要なポイントです。トライアル期間中に、あえてサポートへ簡単な質問を投げかけてみて、その対応スピードや質を肌で感じてみることをお勧めします。

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まとめ:SaaS選びは「旅の始まり」。羅針盤を手に、次の一歩へ

ここまで、SaaS選びで陥りがちな罠から、本質的な比較の観点、そして具体的な実践ステップまでお話ししてきました。

SaaSを導入することは、ゴールではありません。それは、あなたのビジネスをより良くするための、長い旅の始まりに過ぎないのです。そして、その旅を成功させるためには、正しい地図(現状分析)と、進むべき方角を示す羅針盤(導入目的)が不可欠です。

この記事を通じて、あなたは「saas 比較 観点」という名の、自分だけの羅針盤を手に入れたはずです。もう、無数の選択肢の前で途方に暮れる必要はありません。

明日からできる、最初の一歩。それは、あなたのチームで「今、私たちがSaaSで解決したい、たった一つの最重要課題は何か?」を話し合ってみることです。その問いへの答えこそが、あなたのSaaS選びの旅を導く、北極星となるでしょう。

もし、その羅針盤の読み解きに迷ったり、どの航路が最適か判断に悩んだりしたときは、いつでも私たちにご相談ください。20年間、データという海図を読み解き、数々のビジネスという船を目的地まで導いてきた経験豊富な航海士として、あなたの旅に必ずお力になれるはずです。

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SaaS選びは、未来への投資です。まずは、あなたのビジネスが抱える課題について、私たち専門家に話してみませんか。共に、成功への最適な航路図を描きましょう。

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