BtoBサイトのデザイン、成果を最大化するための設計思想
「BtoBサイトのデザイン、そろそろ見直さないと…」
もしあなたがそうお考えなら、きっと様々な悩みを抱えていることでしょう。
「多額の予算をかけてリニューアルしたのに、見た目が綺麗になっただけで問い合わせは増えなかった」
「社内からは『もっと格好良く』と言われるが、本当にそれが正解なのか確信が持てない」
「そもそも、どこから手をつければ良いのか、判断基準がわからない…」
ウェブ解析のアナリストとして20年以上、数々の企業のデータと向き合ってきた私から見ると、これらは非常によくある、そして根深い課題です。しかし、ご安心ください。この記事では、そうした漠然とした不安を解消し、あなたの会社のビジネスを確かに前進させるための、データに基づいたBtoBサイトデザインの考え方を、私の経験を交えながら具体的にお話しします。
こんにちは、株式会社サードパーティートラストのアナリストです。私たちの信条は「データは、人の内心が可視化されたものである」ということ。BtoBサイトのデザインも、この視点から見つめ直すことで、単なる「見た目の問題」から「ビジネスを成長させる戦略」へと昇華させることができるのです。
BtoBサイトのデザインは「お化粧」か、それとも「骨格」か?
まず、あなたに問いかけたいことがあります。あなたの会社では、ウェブサイトのデザインを「お化粧」のように捉えてはいないでしょうか? つまり、事業内容という本体があって、その表面をきれいに見せるための装飾だと考えているケースです。

もちろん、企業の顔として、デザインが与える印象は重要です。しかし、私たちが20年間のウェブ解析で見てきた現実は、成果を出すBtoBサイトのデザインは、ビジネスの「骨格」そのものである、ということです。
骨格が歪んでいては、どれだけ高価な服をまとっても、美しくは見えませんよね。それと同じで、サイトを訪れるユーザー(=未来のお客様)が、何を求めて、どんな情報を、どんな順番で欲しているのか。その動線、つまり情報の骨格がしっかり設計されていなければ、いくら最新のトレンドを取り入れた美しいデザインにしても、問い合わせや資料請求といった「成果」には結びつきにくいのです。
実際に、あるクライアント企業では、デザイン刷新によって問い合わせが30%増加しました。これは、単に見た目を良くしたからではありません。アクセスデータやヒートマップを徹底的に分析し、「ユーザーがどこで情報を探しあぐねているのか」という内心を読み解き、情報の配置や構造という「骨格」からデザインを再設計した結果でした。
BtoBサイトデザインで成果を出すための3つの視点
では、ビジネスの「骨格」となるデザインとは、具体的にどのようなものでしょうか。私たちは、データを分析する際、特に次の3つの視点を重視しています。これは小手先のテクニックではなく、ユーザーの内心を読み解き、ビジネスを改善するための本質的な考え方です。
1. ユーザーを迷子にさせない「道案内」の設計(UXデザイン)
あなたのサイトを訪れたユーザーは、膨大な情報の中から、目的地(=求めている情報)にたどり着くための「旅行者」のようなものです。優れたUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインとは、この旅行者が道に迷うことなく、ストレスなく快適に目的地にたどり着けるよう、分かりやすい地図と標識を用意してあげることに他なりません。

よくある落とし穴は、自社が伝えたい情報を、伝えたい順番で並べてしまうことです。しかし、ユーザーはあなたの会社の組織図や都合など知る由もありません。彼らは自身の課題を解決するためにサイトを訪れています。
私たちは、複雑なページ遷移を分析するだけでなく、時にはサイト内で「どんなお立場の方がご覧になっていますか?」「今、最も知りたい情報は何ですか?」といったアンケートを実施し、定量データ(行動)と定性データ(内心)を掛け合わせることで、ユーザーが本当に求めている「情報の最短ルート」を明らかにします。この「道案内」の設計こそが、UXデザインの核なのです。
2. ユーザーの「あと一押し」をデザインする仕組み(CROデザイン)
ユーザーが求める情報にたどり着いたとしても、それだけではビジネスは動きません。資料請求、問い合わせ、セミナー申し込みといった、具体的な「行動」を起こしてもらう必要があります。CRO(コンバージョン率最適化)とは、このユーザーの背中をそっと押してあげる「あと一押し」をデザインすることです。
忘れられない成功体験があります。あるメディアサイトで、記事からサービスサイトへの遷移率が、どんなにバナーのデザインを工夫しても0.1%から伸び悩んでいました。そこで私たちは、派手なバナーをすべて撤去し、記事の文脈に合わせたごく自然な「テキストリンク」に変更することを提案しました。
見た目は地味になりましたが、結果は劇的でした。遷移率は1.5%へと15倍に向上したのです。これは、ユーザーが求めていたのが「広告」ではなく、文脈に沿った「より深い情報」への自然な繋がりだった、という内心の現れです。「簡単な施策ほど正義」。私たちは、コストをかけずとも、ユーザー心理を深く読めば成果を出せる、という信念を持っています。

3. 「この会社なら大丈夫」という信頼の証(ブランドイメージ)
BtoBの取引は、高額になることも多く、長期的な関係性が前提となります。だからこそ、ユーザーは「この会社は本当に信頼できるのか?」という点をシビアに見ています。サイトデザインは、この問いに対する無言のプレゼンテーションです。
統一感のあるカラーや書体、プロフェッショナルな写真、分かりやすい言葉遣い。これらの一つひとつが、企業の専門性や誠実さを伝え、「この会社なら任せても大丈夫だ」という安心感、つまりブランドイメージを構築します。
デザインを単なる装飾と捉えてしまうと、この視点が抜け落ちてしまいます。デザインは、あなたの会社の理念や価値観を視覚的に伝える、強力なコミュニケーションツールなのです。細部にまで気を配ったデザインは、製品やサービスの品質に対する自信の表れとして、ユーザーの心に届きます。
データ分析は「答え」ではなく「対話」の始まり
ここまでお話しした3つの視点は、すべてデータ分析から始まります。しかし、ここで絶対に誤解してほしくないことがあります。それは、Google Analyticsなどのツールが、魔法のように「答え」を教えてくれるわけではない、ということです。
データ分析とは、サイトを訪れてくれたユーザーたちの「声なき声」に耳を澄ます、対話の始まりにすぎません。「このページで多くの人が離脱している」というデータは、「このページは分かりにくい、期待と違った」というユーザーの無言のメッセージかもしれません。「特定の導線からのコンバージョン率が高い」のであれば、それは「この情報の流れが、私の課題解決に役立った」という喜びの声なのです。

私も若い頃、苦い失敗をしたことがあります。新しい設定を導入したばかりでデータが不十分と知りつつ、クライアントを待たせるわけにはいかないと焦り、不正確なデータで提案をしてしまったのです。翌月、正しいデータが蓄積されると全く違う傾向が見え、クライアントの信頼を大きく損ないました。
この経験から学んだのは、データアナリストは、不確かなデータで語るくらいなら沈黙を選ぶ「待つ勇気」が必要だということです。数字の裏側にあるユーザーの感情や行動をストーリーとして読み解き、仮説を立て、検証する。この地道な対話の繰り返しこそが、デザインを成功に導く唯一の道だと信じています。
明日からできる、最初の一歩
さて、BtoBサイトのデザイン改善について、その本質的な考え方をお話ししてきました。ここまで読んでくださったあなたは、「理屈は分かった。でも、具体的に何をすればいいんだ?」と感じているかもしれません。
大規模なリニューアルを考える前に、まず、あなたに試していただきたい「最初の一歩」があります。
それは、「自社のサイトで、最もお客様に貢献しているページと、最も足を引っ張っているページを3つずつ挙げてみる」ことです。Google Analyticsなどのツールを使えるなら、「閲覧開始数が多いページ」「コンバージョン 貢献しているページ」「離脱率が高いページ」「滞在時間が極端に短いページ」などを調べてみましょう。もしツールが難しければ、営業担当者など、お客様と直接話す機会の多い人に「お客様がよく見ているページはどれですか?」と聞いてみるのも良い方法です。

なぜ、そのページは貢献できているのか? なぜ、そのページは足を引っ張っているのか?
その理由を考えてみてください。きっと、これまで見えていなかった課題や、伸ばすべき長所が見えてくるはずです。
もちろん、本格的な分析や改善計画の策定には、専門的な知識と経験が必要です。特に、社内のしがらみや予算の都合で、本質的な課題に手を出せない、というお悩みもよく伺います。私たち株式会社サードパーティートラストは、そうした状況もすべて理解した上で、顧客の現実に即した、実現可能な改善のロードマップを描くことを得意としています。
もし、あなたが自社のBtoBサイトデザインに本気で向き合い、ビジネスを次のステージに進めたいとお考えなら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。データという羅針盤を手に、あなたのビジネスの航海を、誠心誠意サポートさせていただきます。