「Webアナリストを採用したいが、どんな人を採ればいいのか分からない…」
「採用したアナリストが、期待した成果を出してくれない…」

Webサイトのデータを活用したビジネス改善が叫ばれる今、こうした悩みを抱える経営者や事業責任者の方に、私はこれまで数多くお会いしてきました。優秀なWebアナリストは、ビジネスを加速させる強力なエンジンになります。しかし、その採用はまるで海図のない航海のように難しく、多くの企業が「なんとなく」の感覚で人を選び、ミスマッチという座礁を繰り返しているのが現実です。

こんにちは。株式会社サードパーティートラストのアナリストです。私は20年間、ECサイトからBtoB、大手メディアまで、あらゆる業界でデータと共に企業の航海を支援してきました。その経験から断言できるのは、採用の成否は、採用活動を始める前の「採用基準 策定」で9割決まるということです。

この記事では、羅針盤なき航海に終止符を打つために、私の経験と哲学のすべてを注ぎ込み、失敗しないWebアナリストの「採用基準の作り方」を具体的にお伝えします。読み終える頃には、あなたは自社に本当に必要な人材を見抜くための、確かで、明日から使える視点を得ているはずです。

なぜ「なんとなく」の採用は失敗するのか?

なぜ、多くのWebアナリスト採用はうまくいかないのでしょうか。それは、採用基準が曖昧なまま、「スキルセット」という名のスペック表だけで候補者を評価してしまうからです。

ハワイの風景

私たちは創業以来15年間、「データは、人の内心が可視化されたものである」と信じてきました。アクセス数やコンバージョン率という数字の羅列の奥には、必ずユーザーの喜びや戸惑い、期待といった感情が隠されています。その内心を読み解き、ビジネスの物語を語ることこそが、私たちアナリストの仕事です。

実は、採用基準もこれと全く同じです。採用基準とは、会社が「どんな未来へ向かいたいのか」という内心が可視化されたものなのです。それが曖昧だということは、いわば「どんな目的地に向かう船なのか」を乗組員に示さないまま、出港しようとしているようなもの。これでは、どんなに優秀な航海士(アナリスト)も、どこへ向かっていいか分からず、その能力を発揮できるはずがありません。

かつて、あるクライアント企業が、採用基準の不在から早期離職に悩んでいました。私たちはまず、事業責任者と膝を突き合わせ、「この事業で、データを使って本当は何を成し遂げたいのか」を徹底的に言語化することから始めました。その上で具体的な採用基準を策定し、面接の進め方まで再設計したのです。結果、採用後のミスマッチは激減し、新しく加わったアナリストは自社のデータを「自分ごと」として捉え、次々と改善提案を実行。最終的に、事業の売上を15%以上も押し上げる原動力となりました。

採用の成否を決める「問い」:誰に、何を、なぜ任せたいのか?

では、どうすれば「生きた採用基準」を作れるのでしょうか。その第一歩は、テクニカルなスキルのリストアップではありません。まず、あなたの会社自身に、3つの本質的な問いを投げかけることから始まります。

  1. 誰に(Who):どんなカルチャーを持つチームで、誰と共に働いてほしいのか?
  2. 何を(What):具体的にどんな課題を解決し、どんな役割を担ってほしいのか?
  3. なぜ(Why):その役割を通じて、最終的にビジネスをどう変えていきたいのか?

多くの企業が、「GA4が使える人」「SQLが書ける人」といった「What」のスキル要件から考え始めますが、それでは不十分です。本当に重要なのは「Why」、つまり「その数字の改善の先に、どんなビジネスの風景を見たいのか」という目的意識です。

ハワイの風景

例えば「ECサイトの売上向上」が目的なら、「コンバージョン率を上げる」という表面的な目標だけでは不十分です。「なぜお客様は購入をためらうのか?」「どうすれば、もっと買い物を楽しんでもらえるのか?」といった顧客の内心に寄り添う問いを立て、その答えをデータから導き出せる人物こそ、本当に求めるべきアナリスト像ではないでしょうか。

この「誰に・何を・なぜ」が明確になれば、求める人物像は自ずと具体化します。単なるスキルセットの羅列ではなく、自社の文化にフィットし、同じ目的地を目指してくれる「パートナー」としての人物像を描くこと。それが、採用基準 策定における最も重要な羅針盤となるのです。

スキルセットの見極め方:「できること」と「やりたいこと」の交差点

目的が明確になって初めて、具体的なスキルセットの議論が意味を持ちます。Webアナリストに求められる能力は多岐にわたりますが、私は大きく3つの歯車があると考えています。

1. データ分析スキル(エンジン)
これは船の心臓部であるエンジンです。Google AnalyticsやAdobe Analyticsといった解析ツールを使いこなす能力はもちろんですが、より深い洞察を得るためには、データを取り出す力も重要になります。例えば、SQLが書けるかどうかは、例えるなら、レストランで用意された定食を食べるだけでなく、冷蔵庫にある食材で自由に絶品料理を創作できるかどうか、というほどの違いを生み出します。

2. Webマーケティング知識(航海術)
データはあくまで羅針盤に過ぎません。SEO、広告、CRM、コンテンツ戦略といった「帆の張り方」や「舵の切り方」を知らなければ、船は前に進みません。データ分析の結果を、具体的なマーケティング施策に接続できる知識と経験があるかは、必ず確認すべきポイントです。

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3. ビジネスへの翻訳力(コミュニケーション)
そして、私が最も重視するのがこの能力です。どんなに高度な分析も、それがビジネスの意思決定に繋がらなければ自己満足で終わってしまいます。複雑なデータを、経営層や現場の担当者が「なるほど、面白い!」「それなら、やってみよう!」と感じるシンプルで、心を動かすストーリーに翻訳する力。これこそが、ビジネスを本当に動かすアナリストの証です。

これら3つの歯車が噛み合って初めて、データはビジネスを前進させる強力な推進力となるのです。

採用基準を「生きた羅針盤」にするための3ステップ

では、ここからは具体的に採用基準を策定し、運用していくための3つのステップをご紹介します。

ステップ1:現在地の確認(As-Is分析)
理想の人物像を追い求める前に、まず「自社の現在地」を客観的に把握しましょう。今いるチームメンバーのスキル、組織のデータリテラシー、そして「Webアナリストに任せたいけれど、今はできていないこと」のリストアップです。理想と現実のギャップを明確にすることが、現実的で効果的な採用基準を作るためのスタートラインになります。

ステップ2:基準の言語化(To-Be設計)
次に、そのギャップを埋めるための要件を、具体的な行動レベルまで言語化します。例えば「分析力が高い」という抽象的な言葉ではなく、「ECサイトのGA4データと購買データを統合し、リピート顧客の行動パターンから、次のメルマガ施策を3つ提案できる」といったように、誰が読んでも同じ情景が思い浮かぶレベルまで具体化することが重要です。

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ステップ3:評価方法の設計と面接での確認
策定した基準を、どうやって見極めるのか。その評価方法を設計します。書類選考や面接はもちろんですが、可能であれば実技試験を取り入れることを強くお勧めします。
面接では、過去の実績だけでなく、「これまでで最も困難だった分析課題は何か?」「その失敗から何を学びましたか?」といった問いを投げかけてみてください。その人の思考の深さや、困難への向き合い方という本質が見えてきます。
実技試験では、正解のない課題が良いでしょう。「弊社の(匿名化した)実際のデータです。あなたなら、このデータからどんなビジネス課題を見つけ、最初の一歩として何を提案しますか?」と問いかけることで、スキルだけでなく、当事者意識やビジネス視点を持っているかを測ることができます。

採用基準が「絵に描いた餅」になる3つの落とし穴

最後に、多くの企業が陥りがちな採用基準策定の落とし穴について、私の失敗談も交えながらお伝えします。これを知っておくだけで、あなたの会社の採用成功確率は格段に上がるはずです。

落とし穴1:抽象的な「美辞麗句」の罠
「コミュニケーション能力が高い」「主体性がある」――。こうした言葉は聞こえは良いですが、面接官によって解釈がバラバラになり、評価のブレを生む最大の原因です。採用基準は、誰が評価しても同じ判断ができる具体的な行動目標でなければなりません。

落とし穴2:完璧な「スーパーマン」を求める罠
すべてのスキルを完璧に備えた人材は、まず市場にはいません。かつての私も、クライアントの事情を無視して「理想的に正しいから」とコストのかかる完璧なシステム改修を提案し続け、全く実行されなかった苦い経験があります。採用も同じです。自社にとって「絶対に譲れない一点」は何かを定め、それ以外はポテンシャルを信じる勇気も必要です。

落とし穴3:一度作ったら「塩漬け」にする罠
ビジネスの目的地は、市場の変化と共に変わっていきます。それなのに、採用基準だけが古いままでは、未来の航海に必要な仲間を迎えることはできません。最低でも半年に一度は、今の事業フェーズや組織課題に採用基準がマッチしているかを見直す。この地道なメンテナンスこそが、組織を強くし続けます。

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もし、羅針盤の作成に迷ったら

Webアナリストの採用は、単なる欠員補充ではありません。それは、会社の未来を左右する重要な投資です。

私たちサードパーティートラストが提供するのは、テンプレート的な採用基準の作成代行ではありません。私たちは、まずあなたと共に、貴社のビジネスという「船」がどこへ向かいたいのか、その航海の目的を深く理解することから始めます。そして、その航海に最適化された「羅針盤」と「海図」を、オーダーメイドで設計するお手伝いをします。

あるクライアントでは、私たちと共に採用基準を根本から見直した結果、データから顧客の「なぜ?」を深く読み解ける、まさに求めていたアナリストの採用に成功しました。彼の活躍により、長年の課題だったサイトの根本的な導線が改善され、事業の成長に直結する成果が次々と生まれています。

採用基準の策定は、未来への航海図を描く、創造的でワクワクする仕事です。しかし、もしその途中で霧に迷ったり、専門家の視点が欲しくなったりした時は、いつでも私たちにお声がけください。

明日からできる、最初の一歩

さて、ここまで長い道のりにお付き合いいただき、ありがとうございました。しかし、この記事を読んで「勉強になった」で終わらせてしまっては、何も変わりません。

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ぜひ、明日、あなたのチームで30分だけ時間をとってみてください。そして、たった一つ、この問いについて話し合ってみるのです。

「私たちが、新しく迎えるWebアナリストと『共に』成し遂げたい、一番のことは何だろうか?」

アクセス数を増やすことですか?
それとも、お客様にもっと喜んでもらうことですか?
あるいは、誰も気づかなかった新しいビジネスの種を見つけることでしょうか?

その対話こそが、あなたの会社だけの最高の採用基準策定に向けた、最も確実な第一歩です。

もし、その対話の中で新たな疑問が生まれたり、専門家としてのアドバイスが必要だと感じられたりした際には、いつでも私たち株式会社サードパーティートラストにご相談ください。あなたの会社の未来を拓く航海を、全力でご支援します。

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