「書類上は申し分ない。面接での受け答えも良かった。しかし、なぜ現場では期待した成果が出ないのだろう…」
Webアナリストの採用に携わる方であれば、一度はこのような壁に突き当たった経験があるのではないでしょうか。スキルや経験といった目に見えるスペックだけでは、本当に自社の成長に貢献してくれる人材ことは、極めて難しいのが現実です。
こんにちは。株式会社サードパーティートラストでアナリストを務めております。20年にわたり、ECサイトからBtoB、メディアまで、様々な業界でデータと向き合い、事業の再建をお手伝いしてきました。
私の信条は、創業以来変わらぬ当社の理念でもある「データは、人の内心が可視化されたものである」という言葉に集約されています。そして、この哲学はWebアナリストの「採用」においても、全く同じことが言えるのです。
この記事では、面接官の主観や印象といった曖昧なものに頼るのではなく、データに基づき、客観的かつ多角的に候補者の本質を見抜くための「面接 評価シート エクセル」の活用法を、私の実体験を交えながら徹底的に解説します。単なるテンプレートの話ではありません。あなたの会社の未来を担う、真のパートナーを見つけ出すための、実践的な羅針盤をご提供します。

なぜ「感覚」での採用は失敗するのか? Webアナリスト採用における評価シートの重要性
Webアナリストの採用は、事業という船の「航海士」を選ぶようなものです。優秀な航海士は、データという海図を正確に読み解き、ビジネスを正しい目的地へと導いてくれます。しかし、その航海士を選ぶ面接官が、コンパスも海図も持たず、「なんとなく頼もしそうだ」という感覚だけで採用を決めてしまったら、どうなるでしょうか。
残念ながら、多くの採用現場では、これに近いことが起きています。面接官の経験や勘に頼った評価は、一見すると効率的に思えるかもしれません。しかし、そこには「評価基準のブレ」という大きな落とし穴が潜んでいます。A部長は「論理的思考力」を重視し、B課長は「コミュニケーション能力」を高く評価する。これでは、同じ候補者でも面接官によって評価がバラバラになり、採用判断に一貫性が生まれません。
結果として起こるのが、「採用のミスマッチ」です。これは、単に一人の採用が失敗したという話では済みません。育成コストの増大、チームの士気低下、そして何より、ビジネスが前進する機会の損失に繋がります。
だからこそ、客観的な評価基準を定めた「面接評価シート」が不可欠なのです。特に、データ分析との親和性が高いエクセルで作成することには、大きなメリットがあります。手軽に始められ、自社の状況に合わせて項目を柔軟にカスタマイズできるだけでなく、面接結果を数値データとして蓄積し、分析することが可能になります。「どんなスキルを持つ人材が、入社後に高いパフォーマンスを発揮しているのか」といった傾向を掴み、採用戦略そのものを改善していく、データドリブンな採用活動の第一歩となるのです。
評価シート作成の実践:Webアナリストの本質を見抜く3つの視点
では、具体的にどのような評価シートを作成すれば良いのでしょうか。大切なのは、項目を闇雲に増やすことではありません。Webアナリストという専門職の本質を見抜くために、評価項目を「スキル」「経験」、そして最も重要な「人物像」という3つの視点で構造化することです。

これは、料理のレシピに似ています。「スキル」や「経験」は、言わば食材や調理器具です。しかし、それだけでは美味しい料理は作れません。最終的に味を決めるのは、食材のポテンシャルを最大限に引き出し、食べる人のことを想って調理する「料理人の姿勢」、つまり「人物像」なのです。
1. スキル評価:「何ができるか」ではなく「何を生み出せるか」を問う
スキル評価でよくある間違いは、ツールの利用経験を問うだけで終わってしまうことです。「GA4は使えますか?」「BigQueryは書けますか?」こうした質問も無意味ではありませんが、本質ではありません。
私たちが知りたいのは、そのツールを使って「ビジネス上の課題をどう解決できるのか」という一点です。例えば、GA4のデータを見て「直帰率が高いです」と報告するだけのアナリストと、「このページの直帰率が高いのは、ランディングしたユーザーの期待とコンテンツにズレがあるからかもしれません。そこで、ユーザーの流入キーワードとページ内の行動を分析し、AとBの改善仮説を立てました」と提案できるアナリストとでは、天と地ほどの差があります。
評価シートには、「Google Analytics 4」「Looker Studio」といったツール名のチェック欄だけでなく、「データから課題を発見し、具体的な改善仮説を立案できるか」「分析結果を、専門知識のない相手にも分かりやすく説明できるか」といった、アウトプットを評価する項目を必ず設けましょう。
2. 経験評価:ストーリーと再現性を確認する
職務経歴書に書かれた実績は、あくまで結果の断片です。面接では、その裏側にあるストーリーを深掘りしなくてはなりません。

「CVRを15%改善しました」という実績に対しては、「どのような課題があったのですか?」「なぜその課題が重要だと判断したのですか?」「どのような分析を行い、どんな施策を実行したのですか?」「その成功要因は何だと思いますか?もしもう一度やるとしたら、どこを改善しますか?」と、「なぜ?」を5回繰り返すつもりで質問を重ねます。
これにより、単なる成功自慢ではなく、課題設定から仮説検証、実行、考察までの一連のプロセスを、その人が主体的に行えるのか、再現性のあるスキルを持っているのかが見えてきます。ポートフォリオを提出された場合も同様です。レポートの見た目の美しさよりも、「どのような問いから分析が始まり、どのようなインサイト(洞察)を経て、どのようなアクションに繋がったのか」という思考の軌跡を読み解くことが重要です。
3. 人物像評価:データの裏にある「人の心」を想像できるか
スキルや経験以上に、長期的に組織へ貢献してくれるアナリストを見極める上で決定的な差となるのが「人物像」です。特に私が重視するのは、以下の3つの資質です。
- 探求心:「なぜこうなるのか?」と数字の裏側にあるユーザー 行動や感情にまで思いを馳せ、真因を突き止めようとする姿勢。
- 翻訳力:複雑なデータや専門的な分析結果を、経営層や他部署のメンバーにも理解できる「ビジネスの言葉」に翻訳して伝えるコミュニケーション能力。
- 柔軟性:自身の分析結果に固執せず、他者の意見や新たなデータを受け入れ、より良い結論を導き出そうとするしなやかな思考。
かつて私には、非常に高度な分析手法を開発したものの、お客様のデータリテラシーを考慮しなかったために、全く活用してもらえなかったという苦い経験があります。画期的な分析も、相手に伝わり、行動に繋がらなければ自己満足で終わってしまいます。
面接では、「もし分析結果を信じてくれないクライアントがいたら、どうしますか?」といった状況設定型の質問を投げかけ、その人の思考の癖や対人スタンスを見るようにしています。データへの誠実さと、ビジネスへの貢献意欲。この両方を兼ね備えた人物こそ、私たちが探すべき真のWebアナリストです。

シートは「作る」より「使う」が難しい。陥りがちな失敗と活用のコツ
素晴らしい評価シートが完成しても、それが正しく運用されなければ意味がありません。むしろ、形骸化したシートは、現場の負担を増やすだけの「お荷物」になってしまいます。ここでは、多くの企業が見過ごしてしまう注意点と、シートを真の武器に変えるためのコツをお伝えします。
注意点1:評価基準の「目線合わせ」を怠る
最もよくある失敗は、面接官の間で評価基準が共有されていないことです。「コミュニケーション能力:5点」と評価されても、その「5点」が何を意味するのかがバラバラでは、データを蓄積しても意味のある分析はできません。
対策は、面接を実施する前に、必ず評価者全員で「目線合わせ(キャリブレーション)」のミーティングを行うことです。「5点の人は、具体的にどんな受け答えができる人か」「3点の人はどのレベルか」を、具体的な例を出し合いながらすり合わせるのです。この一手間が、評価の客観性と一貫性を担保します。
注意点2:「評価のための面接」になってしまう
シートの項目を埋めることに必死になり、候補者との対話が疎かになってしまうのも、よくある落とし穴です。評価シートは、あくまで対話を補助し、思考を整理するためのツールです。候補者の話に真摯に耳を傾け、会話の流れの中で自然に評価項目に関する情報を引き出していく。そんな「対話」中心の姿勢を忘れてはなりません。
活用のコツ:採用活動を「改善し続けるプロセス」と捉える
エクセルで評価シートを運用する最大の利点は、データ分析が可能になることです。面接評価のデータと、実際に入社した社員のその後のパフォーマンスデータを突き合わせてみましょう。

「面接評価が高かった人材は、本当に入社後も活躍しているか?」「逆に、評価はそこそこだったが、活躍している人材に共通する特徴は何か?」こうした分析を行うことで、自社にとって本当に重要な採用要件が何なのか
まとめ:明日からできる、理想のアナリスト採用への第一歩
今回は、Webアナリスト採用を成功に導くための「面接 評価シート」について、その本質的な考え方から具体的な作成・活用のポイントまでお話ししてきました。
評価シートは、単なるチェックリストではありません。それは、「自社はどんな人材を求めているのか」という哲学を可視化し、採用に関わる全員の意思を統一するための羅針盤です。そして、エクセルという身近なツールが、その強力な第一歩となり得ます。
私自身、過去にはクライアントの組織事情に忖度して言うべきことを言えず、結果的に改善を遅らせてしまった失敗もあれば、理想論ばかりを押し付けてしまい、何も実行されなかったという失敗も経験しました。採用も同じです。理想を掲げるだけでなく、自社の現状を正しく理解し、現実的に実行できる採用プロセスを設計し、しかし「これだけは譲れない」という核となる基準を持ち続ける。このバランス感覚が、成功の鍵を握っています。
この記事を読んで、「早速、自社でも取り組んでみよう」と感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。

では、明日からできる最初の一歩は何でしょうか?
それは、「まず、あなたが一緒に働きたいと思う理想のWebアナリストの要件を、3つだけ紙に書き出してみる」ことです。スキル、経験、人物像、どんな切り口でも構いません。この小さな一歩が、貴社の採用基準を言語化し、未来の仲間と出会うための旅の始まりとなります。
もし、そのプロセスで「自社に最適な評価項目がわからない」「面接官のスキルをどう向上させればいいのか」「採用プロセス全体を見直したい」といった壁にぶつかった時は、ぜひ私たちにご相談ください。20年間、データの裏側にある人の心と向き合い続けてきた経験が、きっとあなたのお役に立てるはずです。共に、貴社の成長を加速させる最高のパートナーを見つけ出しましょう。