コラム

ランディングページは、データ分析を起点に作る ―「何を測るか」をデザインより先に決める

サイトが出来上がってから計測を後付けする。これがウェブ解析の「王道」でしたが、予算も組織の縦割りも、その後付けを限界づけてきました。AIが分析を自動化していくいま、変わるべきは分析ではなく制作の順番だと考えています。何を測るかを先に設計し、そこから構造とデザインを起こす。その順番がいちばん鋭く効く場所として、ランディングページの作り方を、診断・FAQ・料金シミュレーターの実例とともに書きました。

上村 謙輔

株式会社サードパーティートラスト / 代表取締役

私のキャリアはウェブアナリストから始まりました。主軸はいまもGoogleアナリティクスを使ったウェブ解析とデータ分析です。この仕事の「王道」とされてきた形が、ずっと一つありました。

サイトはすでに出来上がっている。その完成物に対して、Googleタグマネージャーを駆使し、時にはサイト側に実装をお願いして、取るべきイベントを設定する。そうして設計したデータをもとに分析する。これが良いアナリストの仕事だと、私も長く思ってきました。

ただ、この形にはずっと引っかかりがありました。

後付けなんです、いつも。

見える範囲での分析、という限界

データ分析には、広告よりも予算が割り振られにくいという特性があります。分析そのものの予算はついても、「ここをもう少しこう実装すれば、もっと良いデータが取れます」という設定追加の予算までは、なかなか出ない。だから、いま入っている設定の中で何とか分析する、という場面の方が実際は多かった。

当たり前ですが、データが存在しなければ、存在しない部分の分析はできません。本当はもっと深く見たいのに、見える範囲で見る。この妥協が、後付けである限りついて回りました。

組織が大きくなるほど、これは重くなります。小回りのきく小規模の会社や、制作を内製してマーケと一体で動いている会社なら、実装は柔軟にできる。けれど規模が大きくなると縦割りになります。このコンテンツのオーナーは部署A、あちらは部署B、フォームはシステム部。サイトを横断して一つの計測を入れること自体が、組織の構造上むずかしい。

じゃあアナリストがそこに乗り込んで、「もっとちゃんとデータを取る実装をしましょう」と啓蒙して回ればいい。そう思うのですが、アナリストという職種は、そもそも少数精鋭で回すものです。社員に10人も20人もアナリストがいる会社は、大手でもまず見ません。啓蒙して回るエネルギーにも、限界がありました。

AIが自動化するのは、分析の方

ここにAIが入ってきました。

よく言われるのは、アナリストの仕事がAIに奪われる、という話です。実際、データ分析の自動化はかなりしやすくなりました。油断していれば奪われる部分はあると思います。

ただ、AIが自動化してくれるのは「分析」の方です。そう考えたとき、私はむしろ逆のことを思いました。分析に取られていたアナリストの手が、これまで届かなかった上流——制作の設計——に空くのではないか、と。

熟練したアナリストの経験則、特にマーケティングの繊細な機微は、まだAIが理解しきれない部分です。市場の中で有利なポイントを見つけて、それを魅力的に伝える。分析が均一化されていく時代でも、そこは人が輝ける場所として残ります。だとすれば、均一化された分析にしがみつくより、AIでは代えのきかない設計の方に回った方がいい。

もう一つ大きいのは、アナリスト自身が制作の知識を持ちやすくなったことです。もともとウェブアナリストは、データやIT技術に深い知見を持つ人が多い。そこに制作・開発のスキルが乗ると——当社にはそういうアナリストがいます——サイトを作ろうとした最初の瞬間から、その事業を根っこから理解しにいけます。

順番を、逆にする

具体的には、こういう順番です。

どんなユーザーが興味を持つのか。どんな情報を求めているのか。検討はどの段階か——新しく認知したばかりなのか、認知はしていて企画段階なのか。その行動を因数分解して、サイトの中の行動として可視化できるポイントに、先にイベントや取っ掛かりを置いていく。その要件が固まって、初めてコンテンツと構造を組み、そこから段階的に詳細を足していく。

何を測るかを決めてから、構造とデザインを起こす。

初期段階からアナリストが関わったサイトは、かなりパワフルになります。何を見たいかが制作の段階で織り込まれているので、PDCAの回しやすいレポートが、後付けの苦労なしに立ち上がる。

これはLPに限った話ではありません。本来はサイトリニューアルこそ、この順番であるべきです。データで仮説を立てて、「ここの数字がこう変わるべきだ」と言えるなら、その計測の取っ掛かりを、リニューアルの要件定義の入り口に入れておく。それが筋です。なのに実際は、リニューアルは別部署が進め、マーケは仕上がってから設定する。大手ではこの問題が、これからも残ると思います。

一点だけ、釘を刺しておきます。Googleアナリティクスの画面を操作できる、というだけの人が「ウェブアナリスト」を名乗ることがあります。設計を任せる相手を、そこで見誤ると危ない。日々のやり取りの中で、この人の技術は信頼できると判断できる相手に、フレームワークづくりや制作初期からの参加をお願いする。これ自体が、これからの差になります。

いちばん鋭く出るのは、LP

では、この「順番を逆にする」がいちばん効くのはどこか。私は、最もコンパクトな制作物であるランディングページだと思っています。

正直に言うと、私はLPというもの自体が本当に効くのか、いまも少し懐疑的です。それはそれとして、LPというのは1枚のページで、次はもうフォーム。何も仕込まなければ、データの取っ掛かりが本当に何もない構造物です。

1枚の中に情報は山ほど詰まっていて、ユーザーは上下に動きながらそれに触れていく。なのに、何かを仕込まない限り、見られるデータがほとんどない。ページビューしか見ていない、という企業も珍しくありません。

だからこそ、あえてデータを取りにいく機能を仕込みます。私は「ガジェット」と呼んでいます。いくつか挙げます。

王道は診断コンテンツです。「不安なことは何ですか」「どこに興味がありますか」と聞きながら、ユーザーの性別や年代、このサービスのどこに惹かれ、どこに引っかかっているのかを、自然に受け取れる。鉄板で、目新しくはないかもしれませんが、かなり強力です。

次にFAQ。質問と回答を、平べったいページにダダッと並べているのをよく見ます。あれをアコーディオンにするだけでいい。開いた瞬間に、そのユーザーがどの質問に興味を持ったかが取れます。どの質問を開いた人がコンバージョンにつながりやすいか、まで見えてくる。FAQは、申し込む前の最後の不安を、最後に読みにくるコンテンツです。ここのデータは効きます。

クリックさせないと情報に触れさせない、というのは、ユーザー体験を少し損ねる側面はあります。そこは認めます。ただ、マーケティングというのは、消費者にとって必ずしも望ましくない手順を、ある程度の犠牲の上で引き受けて、その先でより良いサービスを届けていく営みだと私は思っています。ユーザーの気持ちが何も分からないままでいるより、クリック一つでそれが分かる。サービスを提供する側にとって、これはかなり大きい。

料金シミュレーターも良いですね。業種によりますが、たとえば中古車なら、どのくらいの価格帯のお客さんが多いのか、その濃淡を掴めることが、事業の判断に直結する場合があります。

ここまで例を並べましたが、正直に付け足しておきます。これらはあくまで過去の、当社の事例です。どんな情報があれば事業に活かせるかは、同じ業界でも、市場でのポジションが違えば変わります。そこは怠けず、「自分たちは何を知りたいのか」から掘り下げるしかない。その掘り下げを一緒にやること自体は、私たちにできます。

最後に

第一歩を踏み出すか。踏み出した後、どこに関心が動くか。最後の迷いはどこで生まれ、そのときどんな情報を欲しているか。申し込みのフローに乗って、どこで離脱するか。そして、コンバージョンというゴールに届いたか。

その一つひとつが、必ずデータとして表に出てくる。そうなるように制作物を設計する。工数の面でも費用の面でも、これまでは実現しづらかった品質です。ここは、当社がかなり強く持っているところです。制作をアナリストが最後まで完結させる形のLPにも、いま取り組んでいます。

だから、制作物を企画するときには——第一に、とまでは言いませんが——データ分析を必須のインフラとして、そういう人材に一度相談してみることを勧めます。

LPが本当に効くのか、という私の疑問は、正直まだ解けていません。ただ、効くか効かないかを、感覚ではなくデータで答えられる制作物を作れるかどうか。その差は、これから確実に開いていくはずです。